1987年に臨床工学技士法が成立して誕生した臨床工学技士という仕事は、資格や仕事内容など、まだよく知られていない部分も多い仕事です。現在、臨床工学技士として実際に働いている先輩たちの声から、「どんなことでやりがいを感じるか」「大変な部分はどんなところか」をまとめてみました。
臨床工学技士を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
「やりがい」を感じるのはどんな時? "病院など、医療の現場でスタッフとして働く人が多い臨床工学技士が、もっとも「やりがい」を感じるのは、やはり患者と接するときのようです。救急搬送されてきた患者が元気になった姿を見たときには、喜びとやりがいを感じられるそうです。
また、赤ちゃん誕生の瞬間や臨終の瞬間に立ち合うことで、生命の尊さについて強く感じられることがあるそうです。生命維持装置などの操作をするにあたり、やりがいを感じる人も多いようです。
そして、自分に取り付けられる機械に抵抗や拒否感を感じていた患者が、信頼関係を築くうちに機械に対する警戒も解いてくれることがあるようです。「あなたがいる病院でよかった」と言われたら、とても嬉しく、やりがいも感じられることでしょう。
臨床工学技士は、医療機器の選定や保守、管理も任されます。そのため、使い勝手の良い機器を選び、使い方を周知してスタッフの業務が円滑に進むようになった時にも、役割を果たした充実感があるという声もありました。
臨床工学技士が転職を考える時
最新の医療機器の操作や保守、管理を担当する臨床工学技士が、つらさや苦しさを感じて「辞めたい、転職したい」と感じるのはどんな時なのでしょうか。
もっとも多かったのが、緊急手術のための「呼び出し」があることでした。病院スタッフの場合は、人工心肺装置や心臓カテーテルなど、緊急手術に使う医療機器を扱う立場だけに避けがたい任務になります。どこの病院でも臨床工学技士の人数はそれほど多くないため、負担が大きい場合もあるようです。
また、担当業務が細分化される大きな病院や透析クリニックに勤務している場合は、「幅広く経験を積むことができず、仕事が単調になる」というケースもあるようです。
ポジティブな「転職を考えた理由」としては、「患者の声を聞いたり医療機器の選定をしたりしているうちに、より役立つ医療機器を作りたくなり、医療メーカーへの転職を考えた」というものがありました。
不満の内容は勤務先によって異なりますが、医療や工学の知識を身につけられていること自体は、とても良かったと感じている人がほとんどでした。
自分の適性や目指すライフスタイルを考えて
医療と工学の知識を合わせ持ち、最先端の医療機器の操作や保守、管理に携わることで、進歩し続ける医療、救命にかかわれるという点に、多くの臨床工学技士はやりがい・魅力を感じています。
ただし、仕事内容や勤務体制、収入などは勤務先によって異なります。そのため、しっかりと情報収集をしておきましょう。呼び出しを避けたい場合は、救急対応のない病院や医療機器のメンテナンスが主な担当になるような職場、医療機器メーカーなどへの転職を考えることができます。高収入やスキルアップを求めるのか、もしくはワークライフバランスを重視したいのかによっても選択は異なってくるでしょう。
転職を考える場合も、やはり「臨床工学技士に戻りたくなれば戻れる」ということが考えられるのも、有資格者の強みですね。まだ浸透し始めたばかりの臨床工学技士には、さまざまな可能性が秘められています。多くの可能性が秘められているということは、また新たな選択肢が生まれる可能性もあるということなのです。
すべての病院にいるわけではない臨床工学技士は、今後さらに求人が増えそうな医療系の資格として注目されています。また、最先端の工学を用いて人の命にかかわることができる仕事であり、やりがいを感じることも多い職業です。国家試験の受験資格は、指定の大学や3年以上の短期大学、専門学校を卒業するか、臨床検査技師や看護師の養成学校を卒業していれば養成学校に1年通うことで得られます。もし医療や工学に興味があれば、ぜひ選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。