透析技術認定士とはどんな仕事?
透析技術認定士とは、腎不全などの方に透析をおこなうための専門知識をもった資格のことをいいます。臨床工学技士は、人工透析の業務に携わっている方が多いので、この資格を持っている人が多くいます。人工透析とは、いろいろな原因により腎臓の働きが悪くなり、体の中の水分や老廃物がうまくコントロールできなくなった方がおこなう治療です。
一度腎不全になると元の状態に戻すことは難しくなります。そのため、ほとんどの方が一生人工透析治療を受けることになり、毎週一週間の間に2~3回、4時間以上治療をおこないます。そのような方のために、透析技術認定士を持つ臨床工学技士は医師の指示のもと人工透析をおこないます。人工透析を行っている医療機関は、全国に数多くあるので透析技術認定士もますますこれから必要となっていくでしょう。
透析技術認定士になるための資格とは
透析技術認定士になるには、以下の資格が必要となります。
- 臨床工学技士:経験2年以上
- 看護師:経験2年以上
- 准看護師:高卒:経験3年以上 中卒:経験4年以上
(すべて透析業務経験年数とし、常勤のみが条件となります。)
講習会の実施方法には3つの方法があります。
- 会場講習:平成30年は、2月20日(火)~23日(金)までの4日間東京でおこないます。
- eラーニング受講:平成30年3月12日(月)~4月13日(金)まで約5週間
- 会場受講とeラーニング受講:定員に達した場合、申込受付を終了するので注意してください。
透析技術認定士の認定試験を受けるためには、講習会を受けることが条件です。
透析技術認定士認定試験の難易度は?
透析技術認定士の認定試験は、日本腎臓学会や日本泌尿器科学会など5つの関連学会が、高度な専門性を持つ臨床工学技士を認定する試験制度です。この資格を取得するということは、透析業務に関するスペシャリストだと認められるということ。維持透析と血液浄化療法についての知識と技術を有している証にもなります。
透析技術認定士の試験は五肢択一の試験マークシート方式ですが、受験資格を得るためには認定講習会を受講しなければなりません。さらに、臨床工学技士や看護師としての経験が2年以上、准看護師としての経験が3年以上あって初めて受験が可能になります。これだけでも狭き門ではありますが、その出題範囲は多岐にわたります。血液浄化療法の歴史や透析機器についての知識、血液浄化療法の概要、透析療法における倫理的問題にいたるまでを学ばなければいけません。
試験を受けるための講習会は例年2~3月中旬に行われ、5月の中旬から下旬ごろに試験が実施されます。2017年の第38回透析技術認定士試験は、受験者数1,298名のうち、合格者が925名、合格率は約71.3%でした。2017年以前の数年の合格率を見る限り、66~72%の合格率の間を行き来しています。難易度に関していえば、資格取得が極めて難しいという数字ではありません。しかし、受験資格を得るにいたるまでの道のりを考えると決してたやすいとはいえないでしょう。
透析技術認定士認定試験の勉強方法
透析技術認定士認定試験を受けるに際しては、所定の講習会を受講しなければなりません。その際は、会場を使った4日間の講習会、もしくはインターネットを介するe-ラーニング講習(30時間ほど)からいずれかを選択することになります。ここで用いられるテキストが「血液浄化療法ハンドブック」ですが、これは試験の2~3ヵ月ほど前に郵送されてきます。試験は、このテキストや「人工透析療法ハンドブック」から出題されることが多い傾向です。
試験では透析に関する高度な知識が求められる内容となっており、事前準備を怠ると、失敗する可能性もあります。過去に出題された内容からは、難しい計算式や証明などはさほど出ず、工学系や医療系の専門的な内容が出題される傾向が強いので、そこに的を絞るとよいでしょう。その中でも、認定講習で学ぶ下記の項目は出題率が高い傾向のため要チェックです。
- 血液浄化療法の歴史
- クリアランス
- 限外濾過率の計算
- ダイアライザの性質
- 水処理システム
- 疾患と治療法
- バスキュラーアクセス
- 腎不全、透析の合併症
- 透析に関する医療費
- 透析液、補充液
- 抗凝固
- 腎移植
臨床工学技士として透析業務の経験がある場合は、それまでの業務や養成校などの授業内容が試験内容と重複している部分が多いため、試験も比較的容易に感じられるかもしれません。その一方で、看護師や准看護師は計算問題などに慣れていないため、それなりの勉強量が必要になります。
問われるのは、基本的な知識以上のレベルになるため、腎移植関連や地震による血液透析用回路の標準化など、時事問題などにも精通しておかなければなりません。倫理的な問題へも日ごろから関心を持っておきましょう。
講習会のテキストだけでは説明が不十分だと感じた場合は、各ガイドラインを確かめたり、他の問題集などを参照したりして、自分なりに知識を獲得していく必要があります。まずは、指定のテキストと問題集などを比較し、出題の傾向を見極め、よく問われがちな範囲の把握に努めていきましょう。
透析技術認定士は5年ごとに更新が必要
透析技術認定士の認定資格は、取得後そのまま継続できるわけではありません。より新たな知識を獲得し、高い技術を有する透析技術認定士であることを証明するため、取得後5年ごとに更新していく必要があるのです。この更新を怠ると、認定そのものが消失してしまいますので注意しましょう。
透析技術認定士を更新するにあたっては、指定された講習会への参加や学会への参加、学術大会での発表などが必要になります。それぞれをポイントに直し、資格取得期間である5年間で50ポイント貯めることが必要です。
一般的な学会への参加、講習会への参加で取得可能なポイントは5ポイントほどです。5年間で50ポイント貯めるためには、1年で2つ以上の講習会、もしくは学術大会への参加が求められることになります。
透析業務にさほど関わりのない技士や看護師・准看護師の場合は、これらのポイント獲得が困難になるため、現在では認定更新のための講習会e-ラーニングが開催されています。e-ラーニングによって30ポイントを獲得でき、講習会後のセルフトレーニングの合格でさらに10ポイントを得ることができますので、活用してみましょう。
資格認定の更新に向けた講習会を受講できる定員は1,000人と決められています。また、受講できる期間は認定証の有効期限の最終年もしくは前年の2年のみです。できるだけ早めに手続きをしておきましょう。
透析技術認定士の年収はどれくらい?
臨床工学技士が透析技術認定士に合格した場合、別に資格手当がつくことはありますが、ほとんどの場合給料が変わることはありません。一般的な臨床工学技士の年収は、医療機関や経験年数によって異なりますが、300万円から400万円台が多いようです。臨床工学技士や看護師として資格取得して得た知識を現場で活かしたいという方がとる場合が多いです。
すぐには年収に結びつきませんが、将来転職を考えているのであれば、人工透析などを扱う医療機関では透析に詳しい専門家として優遇されることもあるでしょう。臨床工学技士としての経験が浅い方は、この資格をとって透析についてさらに詳しい知識を身に着けるということもできます。
透析技術認定士に転職するためには
透析技術認定士に転職するには、臨床工学技士か看護師であれば、資格を取得していない場合でも転職しやすくなります。できれば、転職する前に現在働いている医療機関で、実務経験を積んだあと認定資格を取得しておくといいでしょう。
ただし、透析技術認定士の資格を取得しても、5年経つともう一度更新する必要があり、更新するにもいくつかの条件があります。また、臨床工学技士は人工透析をあつかう専門職として医療機関には、なくてはならない存在です。
まだまだ不足している医療機関も多いので、年収アップを希望しているのであれば、透析技術認定士を取得しておき、自分のライフスタイルや希望にあった医療機関を目指しましょう。
透析技術認定士に転職するメリット
臨床工学技士や看護師として働いている方が、透析技術認定士の資格を取得しても給料が増えることは少ないですが、もし将来転職を希望している方は、透析について詳しい知識を持っているということが認められ有利になります。特に、臨床工学技士は多くの方が取得している資格なので、実務経験を積むことができたら認定試験を取得しておくといいでしょう。
また、透析業務についている臨床工学技士も透析技術認定士をとると、さらに詳しい知識を身に着けることができます。透析患者はこれからも増えることが予想されるため、透析業務を専門にしたいと思っている臨床工学技士はさらに必要となる資格になるでしょう。看護師の場合、取得するのが難しいという声も聞かれますが、合格しておくと透析が詳しい看護師として必要とされるでしょう。