「臨床工学技士は医療機関で働くもの」というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。確かに、病院やクリニックで働いている臨床工学技士は多いですが、必ずしもそうではなく、中には医療機器メーカーや治験コーディネーターとして働いている方も存在しています。また、働く環境は幅広くありますが、どこで働くかによって給料も異なるのです。
ここでは、臨床工学技士の仕事と給与事情について詳しくご紹介します。
医療現場で働く臨床工学技士の仕事
よくイメージされている医療現場で働く、臨床工学技士の仕事内容は、ドクターの指示に従って生命維持管理装置を操作することです。生命維持管理装置には人工呼吸器、人工心肺装置、透析などが含まれます。生命維持管理装置は患者の命に大きく関わるので、臨床工学技士の仕事は責任重大です。
操作するだけでなく、医療機器のメンテナンスも行います。例えば、正常に医療機器が動作するように、定期的に点検を行うことも臨床工学技士の仕事です。
また、故障が発生した時、簡単な修理も臨床工学技士が担います。実際にどんな仕事をこなさなければならないかご紹介します。
1.呼吸治療業務
人は、肺が機能しなくなると呼吸ができなくなり、死に至ります。臨床工学技士は、肺の機能が十分でない患者に使用する人工呼吸器が、安全に使用できているか、または異常がないかなどを確認する業務を行います。
2.人工心肺業務
心臓手術の際には体外循環と呼ばれる装置を使用しますが、臨床工学技士はこれらの操作から管理までを行います。
3.血液浄化業務
入院している患者の中には、体内に溜まった老廃物などを排出できない方もいます。代謝する機能が働かない場合は、血液透析療法や血漿交換療法、血液吸着法などの治療を行いますが、この治療中に臨床工学技士は穿刺や人工透析装置の操作、管理をします。
4.手術室業務
手術は患者の命を預かる現場です。患者になるべく負担を与えないためにはスムーズな手術が必要ですが、手術室には様々な装置があり複雑です。臨床工学技士には、これらをスムーズに管理、操作する役割があります。手術前から装置の確認や点検をし、万全の状態で手術ができるように環境を整えています。
5.集中治療室業務
集中治療室は、命に関わる患者を収容して治療を行っていますが、その中でも臨床工学技士は、人工呼吸器や持続的血液浄化装置の操作や管理を行っています。
6.高気圧酸素業務
高気圧酸素の治療は様々な疾患のある患者に行う治療ですが、臨床工学技士は治療を行う際の装置の操作と管理を行います。
臨床工学技士になるには
臨床工学技士になるためには、まず高校を卒業するか、同等の認定を受ける必要があります。高校卒業後に臨床工学技士になるためのルートは3つあります。
1つ目は、臨床工学技士専門学校もしくは短期大学を卒業して臨床工学技士国家試験に合格するルートです。専門学校、短期大学には3年間通うことになります。
2つ目は、大学で臨床工学技士養成過程を修了するルートです。大学なので、卒業に4年間かかります。
3つ目は、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師の養成学校を卒業後、臨床工学技士専門科に進学して国家試験を受けるルートです。臨床工学技士専門科で1年間勉強して試験に必要な知識を身に付けることになります。
臨床工学技士国家試験に合格した後は、病院やクリニックに就職することになります。
臨床工学士の年収は?どんな手当があるの?
臨床工学技士の平均年収は、全体でみると約400万円~600万円程度となっています。しかし、これはあくまでも全体の平均年収なので、1年目や20代の臨床工学技士は年収が300万円前後ということも珍しくありません。
現場によって異なりますが、基本給に加えて月に5,000円から20,000円程度の手当が付くことが多いです。
また、その他にも資格手当や住宅手当、通勤手当、育児手当、扶養者手当、ボーナスなどがあり、各種手当が付きますので、これによっても年収は大きく変わるでしょう。
臨床工学技士の中でも夜勤をする現場もありますが、夜勤は1回あたりの勤務でプラス3,000円から5,000円ほどの手当が付くこともあります。
病院以外で臨床工学技士が働ける職場・職種の仕事内容は?年収は?
病院で働く方が多いですが、他にも働ける職場はいくつかあり、近年では医療機器メーカーや治験コーディネーターとして活躍している方も増えています。
病院以外で働く場合、仕事内容は何があるのか、年収はどのくらいもらえるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。具体的に仕事内容と年収について紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
医療機器メーカーでの仕事内容と年収
医療機器メーカーに就職する場合、具体的にどのような仕事に就くのかというと、アプリケーションスペシャリストや、クリニカルスペシャリスト、カスタマーサービスなどの営業支援に関わる仕事がほとんどです。
企業の売り上げアップのために結果を残さなければならないので、プレッシャーが高い仕事ではあります。しかし、営業職のサポートをしたいと思っている方や、セールスに貢献する仕事をしたいビジネスマン思考の人には向いている仕事と言えるでしょう。
次に給与について見ていきましょう。
国立や公立の医療機関で働く場合には、公務員扱いとなり、年功序列で昇給していくため、年齢が上がらなければ収入もアップしません。
しかし、医療機器メーカーは一般企業なので、能力次第ではすぐに出世できる可能性があります。収入アップも不可能ではない職業です。
給与体系は企業ごと異なりますが、月給の平均は20万円から30万円ほど、その他にボーナスなどを加えて、年収は400万円から600万円くらいになるといわれています。医療機関の年収に比べると平均して高い事が多いようです。
しかし、医療機関での勤務でも、夜勤に入る日数やその他の手当次第では、医療機器メーカーの年収を超える人もいます。
収入が増えるかどうかは個々の就業条件によって異なるので、転職や就職を考えている方は慎重に比べてから決めた方がいいでしょう。
治験コーディネーターの仕事内容と年収
治験コーディネーターはCRCとも呼ばれており、主に医療機関において治験責任医師、分担医師の指示のもと、医学的判断を伴わない業務や事務的な業務をサポートするお仕事です。
治験コーディネーターの年収は、残業も含め平均で400万円前後となっており、給与は初年度の平均が20万円から25万円となっています。
初めはそれほど高い給料がもらえるというわけではありませんが、5年目以降は平均月収が30万円以上、年収は500万円から600万円となり、昇給のスピードが早いのが特徴的です。
しかし、必ずしも収入が高いというわけではなく、臨床経験年数や、勤務地、持っている資格、面接での評価などによっても給料や年収が異なります。
ある程度の経験があり、評価が高ければ治験コーディネーターは比較的収入が高い仕事なので、夢がある職業と言えるでしょう。
臨床工学技士の年収には地域差がある!
臨床工学技士は、年齢や経験、どこで働くかによっても年収が異なりますが、他にも地域差によって年収に差が出ることがあります。ここでは、都心と地方の給与についてご紹介します。
地方の給料の平均は、初任給が15万円から20万円となっており、その中でも20万円をもらっている臨床工学技士はあまり多くはありません。
一方で、都心の初任給は平均が21万円ほどとなっており、21万円以上の収入を得ている臨床工学技士も少なくありません。地方の場合は年収も300万円を超えないことが多いですが、都心は平均して350万円ほどはもらえています。
しかし、どこで働くか、求人情報によっても異なるので、事前にチェックするようにしましょう。
資格取得で収入アップの道も!
臨床工学技士として働くためには国家資格が必要となりますが、それはあくまでもスタート段階です。収入をアップしたいと考えるなら、それ以上の専門認定資格の取得を検討するといいでしょう。
認定資格を持っている人は、高度な技術を持つ技士と認められますので、キャリアアップにつながります。また、資格を取得すれば、普通の臨床工学技士よりも給料が高くなることもあり、収入アップを目指すことが可能です。
認定資格は、必ずしも臨床工学技士の仕事をするにあたって必要なものではありませんが、自分を磨きたい人や転職活動を有利に進めたい人は、認定資格の取得について考えてみてはいかがでしょうか。
臨床工学技士の今後
臨床工学技士が扱う人工透析装置や生命維持装置は徐々に進歩しています。そのため、今後は給料も高くなることが予想されます。
また、働き方も変化するでしょう。昔は正社員として働く臨床工学技士が多くいましたが、現在ではアルバイトやパートでも働くこともできます。
臨床工学技士は全体的に男性の数が多いですが、このようにさまざまな雇用形態があるため、女性でも働きやすい職業になるでしょう。また、残業がない医療機関もあるので、プライベートを充実させたい人も働きやすい職業になります。
今後も医療機器は活用されるため、臨床工学技士は将来性のある職種と言えるでしょう。