診療放射線技師は、病院やクリニックなどの医療機関に勤め、医師の指示に従い、放射線を使用した治療や検査を行う医療スタッフのことです。放射線を使った治療としては、がん治療が挙げられます。死因の原因になる病気はいくつもありますが、その中でも上位に位置するのががんです。また、レントゲンなども放射線を使用するため、診療放射線技師が必要になります。
診療放射線技師の勤務先は病院やクリニックなどの医療機関が多いですが、放射線に精通しているため、原子力発電所や検査機関で働く人も少なくありません。
そんな診療放射線技師ですが、資格を取得しなければ診療放射線技師として働くことはできません。国家試験に通過した人だけが、診療放射線技師として働くことができるのです。
今回は、診療放射線技師の国家試験の詳細や、合格率や受験の際の注意点などを紹介しますので、参考にしてみて下さい。
【診療放射線技師】国家試験出願について
国家試験に出願する時は、まず受験願書を準備しましょう。受験願書に氏名を記載する必要があるため、戸籍に記されている名前を記入します。
また、受験願書には顔写真が必要です。顔写真を撮影する時は帽子などを脱いで脱帽している状態で写ることが求められます。また、その写真は出願する6ヶ月前までに撮影されたものでなければなりません。
出願をする時は受験願書を郵送するのが一般的です。郵送する際の封筒は縦23.5cm、横12cmの封筒を準備します。また、封筒の表面に郵便番号や宛先を記入します。郵便切手は522円のものを貼り付けましょう。
診療放射線技師の国家試験を受けるためには、試験手数料を支払う必要があります。試験手数料は11,400円です。支払い方法は、まず11,400円分の収入印紙を購入します。その収入印紙を受験願書に貼り付けることで、支払いが完了したことになります。1度支払った試験手数料は、受理されれば受験に参加しなくても返還されることはありませんので注意しましょう。
【診療放射線技師】国家試験の受験資格
診療放射線技師の国家試験を受けるためには、受験資格をクリアしなければなりません。受験資格の条件は主に3つです。
1つ目は、専門学校や短期大学などの教育機関で診療放射線技師に必要な知識や技能を3年間学んだ人です。基本的には診療放射線学科がある短大や専門学校を入学します。
2つ目は、診療放射線学科や診療放射線技術学科などがある大学で4年間学んだ人です。
3つ目は、海外で診療放射線技術を学び、資格を取得し、なおかつ厚生労働大臣が認めた人です。
【診療放射線技師】国家試験の試験内容・試験場所
診療放射線技師の国家試験では、マークシートが採用されています。1つの質問に対して、5つの選択肢が設けられ、その中から正解の答えを鉛筆で塗りつぶします。大学入試センター試験でもマークシートが採用されているので、珍しくはありません。
試験会場で使える文具は、HB鉛筆、消しゴム、黒色のボールペンのみになります。シャープペンシルでマークシートを書き込むことはできません。
また、不正を防止するなどの目的でスマホなどの通信機器は利用できません。スマホの電源を付けたままにしていると、メールや電話がかかってきた時に音がなります。試験中に着信音がなると周りの受験生に迷惑をかけるため、試験前にスマホの電源はオフにしておきましょう。また、マスクを着用する時は、試験官に承認を得る必要があります。
試験科目は全部で13科目あります。分かりやすいように下記に箇条書きで出題される全ての科目を記載します。
- 基礎医学大要
- 放射線生物学(放射線衛生学を含む。)
- 放射線物理学
- 放射化学
- 医用工学
- 診療画像機器学
- エツクス線撮影技術学
- 診療画像検査学
- 画像工学
- 医用画像情報学
- 放射線計測学
- 核医学検査技術学
- 放射線治療技術学及び放射線安全管理学
診療放射線技師の国家試験を受験するためには、試験場所に行く必要があります。試験場所は北海道、宮城、東京、愛知、大阪、広島、香川、福岡です。各都道府県に試験会場が設けられているわけではないので、お住いの都道府県に試験会場がない場合は、実施される都道府県まで移動しなければなりません。
【診療放射線技師】国家試験の合格率・難易度
診療放射線技師になるためには、国家試験を受けて資格を取得することが最低限必要です。これから試験に臨もうと思っている方の中には、合格できるか不安を抱えている方もいるでしょう。合格率はその年によって異なりますが、合格者は年々増えている傾向にあります。では、具体的な数字をチェックしていきましょう。
昨年行われた国家試験ですが、合格率は約85%となっています。この結果を見る限り、100人中85人は合格しており、一昨年の試験と比べると合格率は5.6%もアップしています。
診療放射線技師の国家試験はほとんどの受験者が合格しているので、難易度はどのくらいなのか気になる方も多いでしょう。一般的に、試験の難易度は問題の約6割を正答すれば合格ラインに入ると言われています。
一見簡単に思えますが、問題はその年によって異なり、合格率も毎年下がったり上がったりします。受験者の中には、合格率が高いので、勉強をせずに試験に臨む方もいますが、事前にしっかりと勉強をしなければ合格は難しいでしょう。多くの受験者は、合格するために大学や短期大学、専門学校などで診療放射線技師についての勉強をしています。
学校に通っている新卒者は、実験や実習などを毎日のように行います。そのため、頭に入りやすく、教えてくれる講師もいるので、既卒者に比べると合格率が高いのが現状です。
それに比べ、既卒者は独学で勉強する必要があり、予備校や塾がほとんどないため、新卒者よりも不利になることがあり、試験結果を見ても新卒者の方が試験の合格率は高いです。
数字だけを見ると合格率が高いですが、誰でも合格できる試験ではないことが分かります。
【診療放射線技師】国家試験受験の注意点
これから診療放射線技師の国家試験を受験する方は、いくつか注意したいことがあります。その中でも大切なことを3つ紹介しますので、受験に失敗しないためにも、該当する方はしっかりと確認しておきましょう。
・新卒で合格するようにしっかりと勉強する
診療放射線技師に限りませんが、新卒で合格をしないと合格率はぐっと下がってしまいます。新卒者の方が勉強できる環境が整っているからです。卒業してからは自分ひとりの力で勉強をしないといけないため、なるべく教えてくれる環境がある在学中に資格を取得するように心掛けましょう。
・診療放射線技師になるために一から学ぼうとしている方へ
診療放射線技師の国家試験は誰もが受けられるわけではありません。試験を受けるための資格を得るためには、高校卒業後、厚生労働省が指定する養成学校で少なくとも3年は学ぶ必要があります。決められた年数を学習していないと、受験すらできないので注意しましょう。
学べる学校は専門学校などがありますが、近年では国立大学や私立大学でも学べる環境が整えられています。今後も診療放射線技師について学べる学校は増えていくでしょう。
・国家試験に合格することが最終目的ではない
大学在学中に国家試験に合格することだけを考えて勉強している方もいますが、国家資格を取得したからと言って、必ずしも診療放射線技師になれるとは限りません。なぜなら、資格を所有していても、病院や企業などから雇われなければ診療放射線技師として働くことができないからです。そのため、国家資格はあくまでもスタートラインに立っただけと考えましょう。資格取得後は、就職先を考えなければなりませんし、就職した後も医療の現場で学ぶことがたくさんあります。将来、診療放射線技師として活躍したいとお考えの場合は、資格取得後も勉強することを忘れないようにしましょう。