医師が診療を行う上で欠かせない存在なのが、臨床検査技師です。患者から採取した尿や血液を調べたり、心電図や超音波の検査を行ったりと、医療の現場において重要な役割を担う臨床検査技師ですが、もちろん誰でもなれるというわけではありません。
臨床検査技師として活躍するためには、国家資格である臨床検査技師国家試験を受験し、合格する必要があるのです。
ここでは、臨床検査技師国家試験の内容や勉強法、合格率等について説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
臨床検査技師になるには
臨床検査技師になるためには、まず臨床検査技師国家試験の受験資格を得なければなりません。受験資格は、臨床検査に関わる短期大学、専門学校、大学のいずれかを卒業することで得られます。
また、医学部医学科の卒業者や医師免許所持者、歯学部歯学科の卒業者や歯科医師免許所持者も受験可能です。それに加え、薬学部、獣医学部、理学部などにおいてそれぞれの過程を終了させた上、臨床検査に関わる一定の科目※を取得した場合にも、臨床検査技師国家試験の受験資格を得ることができます。
※医用工学概論、臨床検査総論、臨床生理学、臨床化学、放射性同位元素検査技術学
臨床検査技師国家試験の受験科目と会場
・臨床検査技師国家試験の試験地
臨床検査技師の国家試験は、毎年2月下旬に東京、大阪、北海道、宮城、愛知、広島、香川、福岡、沖縄の全国9ヶ所で実施されています。
・臨床検査技師国家試験の受験申込方法
臨床検査技師国家試験を受験するためには、まず願書と写真、返信用封筒を提出します。提出先は、郵送の場合であれば臨床検査技師国家試験運営本部事務所です。試験実施都道府県には臨床検査技師国家試験運営臨時事務所が設けられるので、そちらへ持参しても問題ありません。
なお、提出期間は毎年12月中旬〜1月初旬ごろに定められ、その他、受験手数料として11,300円が必要です。
また、卒業した学校によっては卒業証明書や卒業見込み証明書、医師や歯科医の場合は医師免許の提示を求められます。
・臨床検査技師国家試験の内容
臨床検査技師の国家試験は1日かけて実施され、午前、午後それぞれ100問が出題されます。
なお、試験科目は以下の通りです。
- 医用工学概論(情報科学概論及び検査機器総論を含む)
- 公衆衛生学(関係法規を含む)
- 臨床検査医学総論(臨床医学総論及び医学概論を含む)
- 臨床検査総論(検査管理総論及び医動物学を含む)
- 病理組織細胞学
- 臨床生理学
- 臨床化学(放射性同位元素検査技術学を含む)
- 臨床血液学
- 臨床微生物学及び臨床免疫学
臨床検査技師国家試験の合格率は
・第64回臨床検査技師国家試験
受験者数…4829
合格者数…3828
合格率…79.3%
・第63回臨床検査技師国家試験
受験者数…4739
合格者数…3729
合格率…78.7%
・第62回臨床検査技師国家試験
受験者数…4400
合格者数…3363
合格率…76.4%
このように、臨床検査技師国家試験の合格率は毎回70〜80%となっていることが分かります。
しかし、新卒に限ると、第64回、63回、62回の合格率はそれぞれ90.5%、89.9%、87.4%であり、いずれも10%以上も合格率が高まるのです。
これは、各大学や専門学校が臨床検査技師国家試験の合格に向けて、特別なカリキュラムを組んでいるからだと言えるでしょう。
国家試験の合格率は大学と専門のどちらが高い?
合格率の高さを見ても分かるように、大学であろうと、専門学校であろうと、臨床検査技師国家試験の合格に向けた教育環境が整えられていることに変わりはありません。
では、大学と専門学校を比べた場合、より臨床検査技師の養成や資格取得に力を入れているのはどちらなのでしょうか。
・臨床検査技師国家試験の合格率は大学よりも専門学校のほうが高い
臨床検査技師国家試験合格のために必要な技術や学科は、大学と専門学校のどちらでも身につけることが可能です。
しかし、それぞれの合格率を比べた場合、大学よりも専門学校のほうが高いことが明らかになっています。先ほど、新卒者に限った場合の合格率は毎回90%近いと述べましたが、専門学校のみに絞った場合はさらに合格率が上がり、毎回90%以上となるのです。
・専門学校は臨床検査技師国家試験合格のための環境が整っている
臨床検査技師として必要な知識や能力、技術を学ぶことができるのは、大学も専門学校も同じです。しかし、専門学校の場合は、国家試験に合格して資格が取得できることを前面に押し出しているため、大学とは異なる部分も多いのです。たとえば試験などは、その代表的な例と言えるでしょう。
大学にも専門学校にも定期試験がありますが、大学のほとんどは記述試験となっているのに対し、専門学校は選択式試験を実施しています。もちろんこれは、本番の臨床検査技師国家試験が選択式だからです。それに加えて、専門学校では、合格が危ぶまれる生徒はそもそも受験させないというシステムをとっているところも少なくありません。
このように特殊なルールやカリキュラムを用いることで、専門学校は高い合格率を誇っているのです。
大学の国家試験対策
上記のように、専門学校では臨床検査技師国家試験合格に特化した環境を整えています。
では、大学の場合、臨床検査技師国家試験に向けてどのような対策を行っているのでしょうか。
・大学では臨床検査技師に必要な技術や知識をじっくり学ぶ
専門学校では、国家試験に合格するための環境が整っていますが、大学では臨床検査技師に必要な知識や技術を学ぶ環境が整っています。
そのため、四年制の一年目は基礎、二年目は実技、三年目は実習…という風に、じっくりと必要な技術を身につけていくようになっているのです。
また、最終的には、目標が臨床検査技師ではない人も試験を受けるため、そのあたりも専門学校との合格率の差につながっていると言えるでしょう。
しかし、専門学校ではなく大学を選ぶメリットもあります。それが、学士の取得です。学士とは、学位の一つで、大学を卒業した者、および大学院の課程を修了した者に対して与えられる称号です。
独学での国家試験対策
繰り返しになりますが、臨床検査技師国家試験の合格率は、新卒のほうが圧倒的に高いです。
とはいえ、受験資格さえ得ていれば、もちろん国家試験は受けられます。では、専門学校等に通わずに独学で臨床検査技師国家試験合格を目指す場合、もっとも効果的な勉強法とは、どのようなものなのでしょうか。
・過去問を解いて出題傾向を把握する
資格取得に限らず、試験の合格を目指す場合は過去問を解くのが一般的です。
これは、実際の試験問題にたくさん触れることで、出題傾向を把握できるからです。とくに「傾向を探ろう」と意識せずとも、数をこなすうちに出題者の意図を汲み取ったり、問題の解き方や考え方に慣れたりできるようになっていくのです。
また、臨床検査技師国家試験の場合、問題の内容は異なっていても意図するところは同じ、つまり応用問題も多いため、過去問を数多く解くことは効率の良い勉強法だと言えるでしょう。
それに加えて、参考書を片手にひたすら記述を繰り返すだけでなく、過去問を解いて本番と同じ選択式回答に慣れておくことも、国家試験合格に向けて大きく役立つはずです。
臨床検査技師になるためには、大学、専門学校、独学と幅広い選択肢があります。そのうちどれを選ぶかはもちろん自由です。とはいえ、もっとも気が進む方法ではなく、もっとも自分に合った方法を選ぶことが大切になります。
臨床検査技師は、検査や情報をもとに患者の病状を分析する非常に重要な存在です。まずは、自身の分析を冷静に行い、医療の場で活躍できる未来に向けて一歩を踏み出しましょう。