仕事と家事、子育てとの両立を目指そうとすると、まず気になるのが職場状況ですしょう。臨床工学技士として働くにあたって、女性ならではの不安や疑問点もあるはずです。女性として、結婚もしたいし子どもを産んで子育てもしたい、もちろんプロとして活躍したい!その希望を叶えるためにも、臨床工学技士の職場環境や女性が働くということの実情を知っておく必要があります。
臨床工学技士の職場状況、女性にとってはどう?
医療関連施設は、看護師さんなど女性が多く活躍している職種もありますが、残念ながら臨床工学技士の場合は男性社会といえる部分が多いようです。というのも、臨床工学技士の資格が設立されたのは30年ほど前で、まだまだ新しい職種です。設立当時は男性技師がほとんどだったため、女性が働きやすい職場環境の整備はこれから進んでいくという段階にあるようです。実際、臨床工学技士の男女比は3:1と言われています。
施設によっては、9割以上が男性技師というところも少なくありません。施設の方針として男性技師を採用したいという医療施設がまだまだ残っているということと、臨床工学技士の不規則な勤務体系が背景にあります。臨床工学技士の仕事内容の一つでもある透析業務では、早朝からの勤務や夜間を通しての勤務など、妊娠・出産・子育てとの両立がなかなか難しい勤務体系の実態があります。
また、手術室業務ではオンコールや夜勤の発生もあり、急な呼び出しに対応できるかどうかも大切になります。臨床工学技士として、仕事とプライベートを両立しながら長く働きたいという方がほとんどだとは思いますが、実態としては先輩女性技師が少なく環境整備がまだ整ってはいないことから、自らが実例となって整備していく、女性が働きやすい環境づくりへの声をあげていくことが必要になってきます。
もちろん、医療施設によってこの差は大きく、施設内に保育所など子どもを預けられる場所が併設されているところもありますし、子育て支援が充実している病院などもあります。大きな病院は、比較的女性が長く働きやすい環境や制度が整っているようです。自身がどのような働き方をしたいのか、将来を見据えての職場選びが重要になってきます。
産休・育休からの復帰状況
これまでご説明してきたとおり、臨床工学技士はまだまだ男性社会的部分があります。もちろん、3分の1は女性技師ですから、産休・育休の取得実例はあります。医療施設によって産休・育休の取得のしやすさには大きな差がありますが、法律では産休・育休の取得許可については義務付けられていますから、理論上は休業することが可能です。
さて、職場や周りの理解が得られ、無事産休・育休を取得できたとして、一体どのくらいの方がその後職場復帰を果たしているのか、気になるところでしょう。実情としては、少々復帰が難しいこともあるようです。人員配置の関係や、時短制度を利用しづらい、フレキシブルな勤務体系が整備できないなどの理由で退職せざるを得ないケースは少なくありません。早朝勤務やオンコール、夜勤をこなせないとなると、どうしても職場の理解が得づらい傾向にあるようです。
また、透析業務などで安定した時間勤務が行えたとしても、休業前は正社員であった雇用形態が契約社員やパートタイマーとなってしまう場合もあります。時短勤務、日勤のみといった制限された勤務の場合、多少致し方ない部分もありますが、正社員として復帰するには、職場の復帰制度が整っていること、時短勤務や日勤のみなどの勤務体系が認められていること、職場内に産休・育休から復帰して活躍している女性技師がいることなど様々な条件が必要になるでしょう。
万が一復帰が難しい場合は、一度退職して主婦として子育てをし、落ち着いたところで新たな職場に再就職するという方法もあります。この場合、再就職受け入れの年齢制限や勤続年数の下限など、希望する就業先がどのような採用基準をしいているのか確認しましょう。また、以前の勤務先が再就職制度を設けているのであれば、まずそちらを当たってみるのも一つの手です。
産休・育休から復帰の際の悩み
少々先が心配になることが多いですが、それでも女性臨床工学技士として子育てをしつつ活躍されている方は多くいらっしゃいます。無事産休・育休が取得でき、復帰の目途も立ちそうだという場合、先輩たちはどのようなことに悩みを抱えていたのでしょうか。
まず、復帰して本当にきちんと働くことができるのか?については、誰しもが悩むポイントです。保育施設に子どもを預けていても、子どもが体調を崩し、いつ保育施設からの呼び出しがあるか分かりません。しかもその際に、すぐに呼び出しに応えられるかというと、医療現場ゆえ急な対応が難しい場合は多くあるはずです。
こういった場合、夫や実家、義実家に応援を頼めるかどうかで安心感が違います。自身が対応できない時、誰が対応可能なのか、どの程度頼むことができるのかは、休業中に確認しておくことが大切です。
もし、皆が忙しく家族での対応が難しい場合は、シッターさんに依頼するという方法もあります。シッターさんにお願いするには、まず子どもとシッターさんの関係性を築くことが大切。早いうちからシッターさんに預ける練習をし、緊急時でも子どもが混乱しないような環境を整えておくことも大事です。
他にも、自身の知識や技術が古くなってしまうのではないか?という不安もあるでしょう。産休・育休を丸々取得すると、1年以上の休業をすることになりブランクが発生してします。その間にも、医療技術や知識はどんどんと進歩していきますし、職場環境も変化します。妊娠・出産・育児に追われるなかでも、独学での知識や情報のインプットは欠かせません。
また、復帰してすぐに職場になじめるよう、同僚や上司と定期的にコミュニケーションをとり、職場の状況を知っておくことも、後々役に立つはずです。忙しい毎日の中で勉強も情報収集もとやるべきことはたくさんありますが、復帰後の仕事をスムーズに進めるためには必要なことでしょう。
まとめ
まだまだ男性社会だと言われる臨床工学技士の職場環境。しかし、女性技師が増加傾向にあることも事実ですから、この先、女性技師も働きやすい環境が整備されていくことでしょう。産休・育休の取得については、医療施設ごとに取りやすさに差がありますから、就業先を選ぶ際はどのような制度や環境があるのかしっかりと確認することが大切です。自身が女性技師をリードする!というくらい、積極的に動いていけるとなお良いですね。