今回は、現役で活躍されている臨床工学技士の方に、その「仕事の魅力」や「志したきっかけ」などに関して詳しく聞いてみたいと思います。
◼プロフィールを教えていただけますでしょうか?
現在は荒川区の町屋にある「町屋駅前クリニック」というところで、臨床工学技士として働いています。過去にいくつかの病院勤務を経験しており、新規の透析センターの立ち上げなどにも関わったこともあります。業務は血液浄化療法であり、慢性維持透析患者様の日々の透析治療に従事しています。
◼臨床工学技士とはどういったお仕事でしょうか?
一言でいうと、「病院内の機器管理をする専門職」です。
臨床工学技士の仕事は、主に5部門に分かれています。例えば、「呼吸療法業務」、「人工心肺業務」、「血液浄化療法業務」、「高気圧酸素療法業務」、「医療機器管理業務」など。それぞれの部門において日本臨床工学技士会の認定資格があります。私が主業務としている血液浄化療法に関する資格としては、「透析技術認定士」、「血液浄化専門臨床工学技士」、「透析技能検定」などです。またこの中で、「ひとつの資格を取ればいいか」、それとも「複数の資格を包括的に取るべきか」については、勤務する病院の規模や方針などによって変わってきます。
◼臨床工学技士になりたいと思われたのはいつですか?また、そう思われたきっかけなどありますか?
根本的には、「人を助けられる仕事だ」というところです。
臨床とは本来「ベッドサイド」のことを意味しています。軽い病状の方もいますが、中には、重症の方もいます。臨床工学技士は病院の機器管理の専門家というメインの業務に加えて、患者様方にも声をかけ、心理的な負担を軽減させてあげられるという側面があります。
私は19歳の頃、ある病気で40日ほど入院生活を送ったことがあります。その時に、「この病気は治るのだろうか」、「自分はいつ良くなるのだろうか」と強い不安を感じたことがありました。そして、誰にも相談できず、その不安を抱えたまま過ごしていました。
自分が病院スタッフになり、「過去の自分のように不安を抱えて入院生活を送っている人に、直接声をかけて、不安を取り除いてあげたい」と思ったことが最初のきっかけですね。
◼どういう仕事のイメージを持たれていましたか?
医療現場にはあらゆる職種があるので、最初はあまり想像ができなかったのですが、透析施設に見学に行ったときに、40床の施設で一斉に透析をしている状況を目の当りにし、「血がぐるぐるとしていて、これは大丈夫なのか?」と不安に思ったことを覚えています。実際に資格を取り初めて穿刺をする段階になると、緊張で手がぶるぶると震えていました。やはり医療に関する業務というものは、想像するよりも実際に現場に出向き、経験を積み上げていくものなのでしょうね。
◼臨床工学技士になる為にはどういった方法がありますか?ご自身はどの道を選ばれましたか?それぞれの特徴やメリット・デメリットは?
私が臨床工学技士の資格を取った当時は、取得できる学校が都内に2校、全国にも15~20校程度しかありませんでした。現在は全国で40校以上の臨床工学技士の養成所があります。また、専門学校以外に、大学でも当然取得できますので、選択肢は増えていると思います。
専門学校と大学ですが、内容としてはそこまで変わらないと思います。ただ大学は、大学病院と提携しているという就職的なメリットがあります。基本的には、国家資格を取り、技士として適切な仕事ができればいいわけですから、専門学校であろうと大学であろうと、本質的にはそこまで変わりないと思います。
◼ご自身の性格は臨床工学技士に向いていると思いますか?どういった点で向いていますか?ちなみにどういった性格の人が向いていると思われますか?
「一つのことを突き詰める」という性格の人が向いていると思います。病院には、多くの職種があります。臨床工学技士の業務も多様にわたります。あっちも、こっちもやりたいという気持ちを持っている方よりも、 一つの物事に対して集中するタイプの方にフィットする仕事だと思います。また、病院の仕事は基本的にチーム医療であり、様々な職種の方々が互いに尊重し合ってより良い医療を患者様に提供するものです。そのためコミュニケーション能力は非常に重要です。病院の仕事は基本的にチームでの作業であり、感情的になる場面もあります。そんな職場において患者をはじめ誰に対しても、いかなる時も、冷静でちゃんとした受け答えができる人が向いています。
ありがとうございました。
次回は、臨床工学技士の実際の勤務内容や1日のスケジュールに関してうかがっていきます。