受験資格
放射線取扱主任者は、放射性同位元素あるいは放射線発生装置を取り扱う際、放射線障害防止法に基づき、放射線障害の防止を監督する者のこと。
この資格を有していることで、放射線同位元素や放射線発生装置を扱う事業所、販売所、廃棄事業所、病院、研究機関、製造業などで放射線設備の日常のメンテナンスや修理、新製品の開発などに当たることができます。
また、放射線取扱主任者免状を持たなくても、医療現場での診療目的であれば、医師または歯科医師を放射線取扱主任者として選任することもできます。
放射線取扱主任者免状には、取扱区分によって第1種・第2種・第3種の3種類がありますが、業務範囲がもっとも広くて、施設を選ばすに選任できるのが、第1種です。
第3種は講習を受けるだけで取得できますが、第1種・第2種に関しては、筆記試験を受験し、その合格後に資格講習を受講しなければなりません。
試験を受験するのに特に制限は設けられていませんが、放射線障害防止法の規定で、18歳未満は放射性同位元素等を取り扱えないため、18歳未満の人は放射線取扱主任者試験の資格講習を受講することはできません。
試験を実施しているのは、原子力規制委員会所轄の登録試験機関・原子力安全技術センター。試験合格後、資格講習を経て申請し、原子力規制委員会から免状を交付されます。
第1種放射線取扱主任者試験に合格した者は、核燃料取扱主任者試験において【放射線測定・放射線障害防止に関する技術】が免除されます。
通常は更新の必要はありませんが、事業所等において放射線取扱主任者として選任されている場合は、定期的に講習を受ける義務があります。
試験内容
第1種・第2種の試験は、公益財団法人原子力安全技術センターが実施するもので、全科目択一問題のマークシート方式です。
第1種の試験は2日間にわたっておこなわれ、1日目は、「物理学、化学及び生物学のうち、放射線に関する課目」で6問、「物理学のうち放射線に関する課目」で30問、「化学のうち放射線に関する課目」で30問。物理と科学では、計算問題がメインになっています。
2日目は、「放射性同位元素及び放射線発生装置による放射線障害の防止に関する管理技術並びに放射線の測定技術に関する課目」で6問、「生物学のうち放射線に関する課目」で30問、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に関する課目で30問が出題されます。知識を問われる問題が多く、暗記に重きを置かねばならない科目ばかりです。
第2種の試験は、「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する管理技術Ⅰ」で5問、「放射性同位元素による放射線障害の防止に関する管理技術Ⅱ」で30問、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律に関する課目」で30分出題され、試験が行われるのは1日です。
いずれも、試験日の4月1日現在で施行されているものについて出題されているので、法令の改定などにも十分留意しなければなりません。
さらに、これらの試験に合格した後は、指定講習を受講しなければなりません。第1種で5日間(30時間)、第2種で3日間(18時間)と定められており、この修了試験をもって放射線取扱主任者の資格を得ることになります。
受験料
受験料は、第1種が14,300円(税込)、第2種が10,200円(税込)と定められていますが、講習の受講料は、講習を行う機関によって異なります。
講習を行うのは、一般財団法人電子科学研究所、公益財団法人原子力安全技術センター、公益社団法人日本アイソトープ協会、独立行政法人日本原子力研究開発機構など。第1種・第2種・第3種のいずれで受講するかによって、実施する機関と講習場所が異なっています。
受講料は最大で第1種が170,205円(税込)、第2種受講料が101,300円(税込)、第3種受講料が98,500円(税込)です。
今後受験料や受講料が改められる可能性もありますので、最新の情報にご注意ください。
試験日程
願書の申込期間は例年5月中旬から6月中旬まで。その後、第1種の試験が8月下旬の2日間、第2種の試験が第1種試験の翌日に実施されることになっていて、第1種及び第2種の試験を同時に受けることもできます。
試験会場は、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡の6カ所ですが、第1種講習は東京・茨城・大阪のみ。 第2種講習は青森・東京・京都・大阪の4カ所で、 第3種講習は青森・東京・愛知・京都・大阪の5カ所で実施されています。
難易度(受験者数、合格者数、合格率など)
第1種・第2種試験では、全試験科目で60パーセント以上の得点率で、なおかつ試験科目ごとに50パーセント以上の得点率であることが合格条件です。
第1種の合格率は、2015年度に全受験者 3,853人のうちの 30.7パーセント、 2014年には全受験者 3,678人のうち の25.9パーセントでした。第2種も30パーセント台の合格率。放射線取扱主任者試験で出題されるのは特殊な分野で、それなりの知識を持つ人たちが受験しての合格率であることを考えると、決して難易度が低いとは言えないのが実状です。
放射線取扱主任者の資格に関する公式URL
勉強時間目安
放射線取扱主任者の資格は、難易度が高い第1種から第3種まで3つに区分されていますが、第1種・第2種の試験は、いずれも物理、化学、生物、法令の分野での知識が求められます。
勉強時間の目安は、学校での履修履歴などによって随分異なるでしょう。物理、化学を得意として、放射線に関わる仕事に従事している人は、3カ月ほどの勉強期間を設ければ十分だと思います。しかし、文系の専攻をしてきた人など、物理や化学の知識に乏しい場合は、より長期的な勉強体制を整えるべきでしょう。
先ずは参考書を一通り読むことから始めましょう。内容をじっくりと読み込む必要はありません。各教科で勉強しなくてはならないテーマを頭の中で整理しながら、勉強する範囲を把握していきます。この時、法令は省いてしまっても構いません。なぜなら、法令のみ暗記する教科となります。期間後半に取り掛かって、過去問を解きながら試験直前まで繰り返し覚えていく、という方が効率的だと思います。
各教科の概要をを参考書で学んだあとは、各項目を細かく見ていきます。内容が難しく歯が立たないと感じても、焦らず、諦めずに読み進めていきましょう。また、この時に出てきた公式は一か所にまとめておくことをおすすめします。公式は数多く出てくるので、過去問などの演習問題に取り組む時に参考書の内容を探さずに済みます。また、最後の詰めの時にも活用できます。
次に、過去問に取り組んでみましょう。これまでの過去問を繰り返し解くことで、出題頻度の高い分野や出題傾向を知ることができます。さらに、参考書にある膨大な情報の中から、重点を理解できるようになるはずです。過去問は、少なくとも直近の5年分を解くようにしましょう。解説を読み、わかりにくい個所を参考書で確かめるといった往復を重ねる勉強法をとれば、効率よく学ぶことができます。
過去問を解く中でもう一つ意識したいことは、時間です。実際に解いてみると、試験では電卓は一切使用できませんし、時間が足りないことに驚くかもしれません。問題の数と時間で計算してみますと、各問題2分半で解き進めなければなりません。
過去問で誤った問題の解説を見ても言葉や公式が少しも理解できないといった場合は、その基本から勉強しなおしましょう。
過去問を解く2週目あたりから、法令も加えていきましょう。暗記の教科の勉強ポイントは、毎日少しずつです。直前に一気に詰め込んでも知識の定着は図れません。短時間でも良いので後半に差し掛かったら毎日時間を確保しましょう。
最難関である第1種合格を最終目標に置いている人も、第2種に挑戦したのちに第1種を受験することもできます。
試験範囲の第1種の過去問に取り組んでみて、よい感触を得た場合は、第1種に特化して勉強し、無駄のない合格を目指しましょう。
また、全科目ごとに5割以上の正答率、得点の合計が6割という合格条件があるため、基本的な問題をいかに落とさないかが重要になります。
放射線に関する法改正などもありますので、最新の情報にも注意しながら勉強していきましょう。
おすすめ参考書ランキング
参考書としてランキング上位に入ってくるのは柴田徳思著『放射線概論―第1種放射線試験受験用テキスト』です。第1種の範囲である物理、化学、生物、計測、管理,法令を網羅しているため人気があり、まさに鉄板の一冊と言えるでしょう。ただし情報量が多く、かみ砕いて吸収するのに時間がかかるという側面もあります。
そこでおすすめしたいのが、福井清輔著『わかりやすい 第1種放射線取扱主任者 合格テキスト (国家・資格シリーズ 337)』と『わかりやすい 第2種放射線取扱主任者 合格テキスト (国家・資格シリーズ 338)』。
グラフや表、挿絵といった視覚に訴える情報が多く、理解速度が上がるうえに、覚えるべき知識に関する関連事項も併記されていて、上手にデータがまとめられています。さらに、演習問題もあり、頻出分野を徹底的に勉強できるのがおすすめする理由です。
問題集としては、『放射線取扱主任者試験問題集(第1種)』もしくは『放射線取扱主任者試験問題集(第2種)』がおすすめです。問題のすぐあとに解答があり、答え合わせや振り返りがすぐに行えるので、復習が容易です。また、福士政広編集『第1種放射線取扱主任者試験 重要問題集中トレーニング』もよいでしょう。こちらは過去8年分の問題の中から,重要な問題を厳選して解説し、各項目は基本問題を解説した後に応用問題を掲載している。
さらに、これから勉強を始めるという人には、放射線取扱の基礎が要領よくまとめられている戸井田良春著『よくわかる 第1種 放射線取扱主任者試験 テキスト&問題集』をおすすめします。
これらの参考書・問題集を用いながら、効率よく勉強することが、合格への近道です。決して難易度が低いとは言えない試験だけに、挑戦のしがいもあるはず。あきらめず、コツコツと勉強を続けてください。