受験資格
NSTとは栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)の略称であり、病院で低栄養状態になっている患者に対して、複数の職種のスタッフが力を合わせて、栄養管理を行って、病気の改善や予防を目指すチームのことをいいます。NST専門療法士の資格は、管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、そして言語聴覚士などが、NSTの専門家となるために目指す資格の一つです。
NST専門療法士は、誰もが資格取得できるわけではありません。受験するためには、次のような条件をクリアしておく必要があります。
- 日本国内において、管理栄養士など認定の対象となる国家資格を有すること
※認定対象国家資格:管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師 - 1.の資格を取得したうえで5年以上、医療・福祉施設に勤務し、栄養サポートに関する実務経験を有すること
- 日本静脈経腸栄養学会主催の学術学会に1回(10単位以上)、NST専門療法士受験必須セミナーに1回(10単位以上)を必須単位として、必須単位数30単位以上、必須単位に加え、日本静脈経腸栄養学会が認める栄養に関する全国学会や地方学会、そして研究会への参加単位数が30単位場であること
- 認定教育施設での合計40時間以上の実地修練を修了していること
上記の条件は、どれか一つではなく、すべてに該当しておく必要があります。現時点で栄養士や準看護師であり、1.を満たしていなかったとしても、申請時に管理栄養士や看護師資格を取得できていれば、受験申請が可能です。また、栄養士や准看護師として働いた機関は、勤務期間として加算することができます。
試験内容
問題数は全部で80問であり、すべてマークシート方式となっています。試験内容としては、明確に範囲や科目は指定されていません。すべて、NSTに従事するために必要な知識の中から問われます。そのため、非常に出題範囲が広いです。ハンドブックや受験対策セミナーなどで勉強した内容が出題されやすいです。
受験料
10,000円
受験料は、専用の払込票をダウンロードして納付する方式です。納付の受領書は、受験申し込みの時点で必要となりますので、なくさないように注意しましょう。
なお、合格後には認定料として20,000円が必要となります。
試験日程
認定試験は毎年1回実施されます。例年通りであれば、毎年11月の第1週に試験が実施されます。時間についても、13時から15時であることが多く、試験時間は2時間となります。
試験の申込期間についても、例年通りであれば、受験する都市の6月から7月いっぱいであることが多いです。当日消印があれば有効となりますが、期限を過ぎてしまうと受け付けてもらえませんので気をつけましょう。
申請書類は、非常に多いので忘れないようにする必要があります。必要な申請書類は以下の通りです。
- 平成30年度受験申請書
- 平成30年度受験者履歴書
- 国家資格の免許証(写)
- 臨床実地修練修了証明証
- 症例報告書
- 取得単位確認票
- 日本静脈経腸栄養学会学術集会参加証(原本)
- NST専門療法士受験必須セミナー(旧 JSPEN臨床栄養セミナー、コ・メディカル教育セミナー)修了証(写)
- 学会の認める全国学会、地方会、研究会参加証(写)
- 受験料振込証明書
- 申請書類受理通知用の官製ハガキ
- 長3封筒(宛名に申請者氏名、郵送先を記載のうえ、82円切手を貼付のこと)
申請書類は、日本静脈経腸栄養学会のホームページでダウンロードできるものが多いので、まずはホームページを確認するようにしましょう。
書類送付の際には、A4の封筒に必要書類を入れて、「専門療法士受験申請書類在中」と朱書きをして、簡易書留などの記録が残る方法で郵送しましょう。また、複数申請はできませんので、1人1封筒で申請する必要があります。
難易度(受験者数、合格者数、合格率など)
NST専門療法士は、毎年の受験者数や合格者数などを明確に発表していません。そのため、合格率などを正確に算出するのは難しいでしょう。ただし、合格者の受験番号などから逆算した結果では、例年60%から70%が合格しているということが分かっています。
受験資格のハードルが比較的高いのですが、既に業務に従事している人が対象の資格であり、受験のための対策セミナーなども実施されています。さらに試験の合格最低ラインとして、正当率が60%と毎年固定されています。これは、例年変更されていません。そのため、しっかりと目標を見据えたうえで試験対策をしておけば、NST専門療法士という資格は決して難易度が高い試験とはいえないでしょう。
公式URL
一般社団法人日本静脈経腸栄養学会の管轄となります。
NST専門療法士の資格に関する公式URL:https://www.jspen.or.jp/qualification/nst/
勉強時間目安
NST専門療法士の試験問題数は、2時間で80問と非常に多いのが特徴です。1問当たり、1分30秒以内で問題を読んで回答しなければならないので、素早い判断力が必要です。反射的に解けるよう練習問題をこなしておきましょう。ただし、問題はすべてマークシート方式ですので、決して解くことが不可能な問題数ではありません。範囲が広いですので、早めに試験対策を始めることをおすすめします。特に栄養管理に関わる生科学や代謝栄養学が必要になるため、基礎教育課程で学んでいない方はさらに早めの勉強開始をおすすめします。
勉強法
この試験の特徴として、受験資格に日本静脈経腸栄養学会が行う受験必須セミナーへの参加や実地修練が課せられていることです。セミナーや実地修練への参加の際に認定試験を意識しながら参加しましょう。
座学での基本的な勉強方法としておすすめなのは、人気の「静脈経腸栄養ハンドブック」を読み込んで理解を深めた上で、市販のテキストや基本問題集、参考書を購入し実際に問題を解いていくことです。受験必須セミナーで出た内容なども試験に出やすい傾向がありますので、セミナーで学んだ内容については、苦手な分野や重要なポイントをまとめる等、重点的に勉強するようにしましょう。
ある程度ハンドブックの内容や問題集の理解が出来たら、実際に過去問を解いて、どれくらいの正答率になるのかを把握しましょう。但し、市販の過去問は実際の試験と問題数が異なるため、実際の試験と同じ条件で力試しを行いたい場合は、の模試も実施されていますので対策の総まとめに受けてみると時間配分の感覚を掴むことが出来ます。模試は80問/120分、マークシート形式です。
合格ラインは、全体の60%ですが、過去問を解いて合格ラインだと、本番当日に合格ラインに達するかどうか心配が残ります。できれば80%以上で限りなく100%に近づけるように繰り返し過去問を解きましょう。
過去問を解いてみて、間違った問題については、自分自身でガイドブックや基本問題集などを確認して、答えの解説などをまとめてみることをおすすめします。自分自身で解説を作ることで、理解を深めることができるでしょう。
また、問題の解答は、日々のNSTの中にすべて隠れています。問題集や過去問などでどうしても理解できなくなった場合は、自分の仕事に置き換えることで、解決できることもあるでしょう。苦手な分野を、チームに相談することで、解決の糸口となる可能性もあります。NST専門療法士が開催する勉強会等を活用すると、昨年度の試験内容、傾向と対策等実際に合格した人から合格するためのポイントを聞くことが出来ます。
頻出分野
80問のうち10問~20問は症例問題です。他の設問は問題集等で対策を取ることが出来ますが、症例問題は実際に現場で疑問に思ったこと等をまとめておくと良いでしょう。
勉強時間の目安
試験合格のための勉強期間は、独学の場合、最低でも半年は必要です。最初の3ヶ月間で分からないところや弱点を明らかにし、残りの期間で過去問や模試などの問題を徹底的に解くことが合格への近道です。
また、NST専門療法士の試験で最も重要なのは、実地での経験です。仕事を通して、試験に必要な知識を習得することが出来ます。「試験ではどのように問われるのか」ということを常に意識しながら仕事に従事すると、日々の勉強がはかどるでしょう。実地修練やセミナーへの参加と、座学での勉強を並行して行うことをおすすめします。
おすすめ参考書ランキング
ランキング上位の中からおすすめのものを選ぶとすると、まずは「公式」問題集を活用することが一番の近道です。「日本静脈経腸栄養学会 認定試験基本問題集」は、試験の内容を網羅しつつ日常的な学習に活用できる工夫が施されています。解説を読み込むと正解だけでなく、当該分野全般の学習することが出来ます。実際の試験が80問のところ、こちらの問題集は65問であるため「掲載量が少ない」という声もありますが、繰り返し取り組むためには丁度よいボリュームであり、実際問題も10~20問が症例問題であるため、65問というのは適切なボリュームであると言えます。
また同学会は「日本静脈経腸栄養学会 静脈経腸栄養ハンドブック」を並行して用いるように説いています。基礎的な知識はもちろん、現場でNSTの資格を活かしてどう患者に尽くすべきかも記されているので、資格取得後の実務にも活用できることでしょう。「日本静脈経腸栄養学会 認定試験基本問題集」を足がかりに、問題集で苦手な部分や現場で疑問に感じたこと等を「日本静脈経腸栄養学会 静脈経腸栄養ハンドブック」でさらに理解を深めましょう。
試験対策の追い込みに、「一般社団法人日本静脈経腸栄養学会 NST専門療法士認定試験 過去問題集I」も活用しましょう。実際に出題された問題の中から厳選された66題が掲載されています。実際の試験は80問ですので2時間ではなくより短い時間で解答出来るようになるまで繰り返し解くことをおすすめします。