受験資格
医学物理士は、放射線医学における物理的及び技術的課題に関するスペシャリスト。医学物理士になると、専門家として医療の現場で役立てるほか、医学物理学部門での研究、人材育成の面で貢献できるでしょう。日本で医学物理士になるためには、医学物理士認定機構の認定を受ける必要があります。その認定を受けるためには、医学物理士認定試験に合格した上で、業績基準を満たし、認定申請を行わなければなりません。
また、受験料の納付書の控えは、コピーをとり、願書に貼り付けて出願しなければなりません。必ず、出願前に受験料を納付しておきましょう。
受験するためには、次の9つのうちのいずれかをクリアしておく必要があります。
- 医学物理士認定機構が認定している医学物理教育コースの修了
- 理工学系の修士・博士の学位取得し、業績評価点5単位以上を有している
- 放射線技術系の修士・博士の学位取得し、業績評価点5単位以上を有している
- 認定されていない医学物理教育コースで修士・博士の学位取得し、業績評価点5単位以上を有している
- 学歴に関係なく医学物理の発展に寄与したと特に認められる人
- 平成24年度までに理工学系学士の学位を取得し、医学における経験年数3年以上
- 平成24年度までに放射線技術系学士の学位を取得し、医学における経験年数2年以上
- 平成22年度までに診療放射線技師免許を取得し、医学における経験年数5年以上
- 平成22年度までに、医師または歯科医師以外で医学または歯学博士の学位を取得し、医学における経験年数1年以上
上記の受験資格のうち、「1」を満たしている場合は、医学物理士の新規認定において優遇措置を受けることができます。そのため、新規認定の確率を高めるためには、認定を受けた医学物理教育コースを修了しておくことをおすすめします。また、「2」「3」については、書いてあるように学歴だけではなく、定められた臨床研修や業績点が必要となるのでご注意ください。
なお、「5」については、確認が必要なので出願前の早い段階で「医学物理の発展に寄与したか」を一般財団法人医学物理士認定機構に確認しましょう。
試験内容
試験内容は、記述式と多肢選択式となり、以下の学問から出題されます。範囲はかなり広いです。大きく分けると、記述式とマークシートから答えを選択する多肢選択式に分かれます。
- 記述式試験
放射線診断物理学、核医学物理学、放射線治療物理学、放射線計測学、保健物理学/放射線防護学 - 多肢選択式試験
放射線物理学、統計学、保健物理学/放射線防護学、放射線診断物理学、核医学物理学、放射線治療物理学、放射線計測学、医療・画像情報学、放射線関連法規および勧告/医療倫理、基礎医学、放射線診断学、核医学、放射線腫瘍学、放射線生物学
受験料
20,000円
受験料の納付は、願書受付前から始まっており、あらかじめ納めることが可能です。例年通りであれば、7月第1週から、8月の出願締切日までとなっています。受験料の納付は、郵便局及びゆうちょ銀行で納付することができます。ATMでも可能でありますが、どちらの場合でも送金手数料は個人負担となるので注意してください。
試験日程
医学物理士の試験は、例年通りであれば毎年9月の最終週に行われます。受験日は1日限りですが、1日を通して試験が続くことに注意しましょう。
また、出願方法は、インターネット出願を併用した郵送受付のみとなっています。ネット上で必要な情報を入力し、出願書類を印刷して角形2号封筒で郵送します。郵送の際には、通常郵便ではなく、簡易書留で郵送しましょう。万が一通常郵便で事故があった場合は、その事実を考慮してもらうことができませんので注意してください。
出願期間は、例年通りであれば8月の第1週から第3週程度までの期間のみとなっています。消印受付ではなく、必着となっているので、遅配になる可能性も含めて早めに出願するようにしましょう。
難易度(受験者数、合格者数、合格率など)
医学物理士の試験では、明確な合格点数は発表されていません。試験を受ける際に、何点取っておけば合格するのかは分からないのです。
例年の受験者数は、およそ300人程度。その中で、合格者数は100人前後です。つまり、医学物理士試験の合格率は、およそ3割程度なのです。このように、受験者数がそもそもあまり多くない上に、合格率が3割というと、かなり難易度の高い試験であることが分かるでしょう。
また、医学物理士の試験は合格ラインの得点を定めていない一方で、合格率は3割程度に据え置いている状態にあります。受験者の数やレベルに応じて、合格に必要な得点数は大きく変わってくると言えるでしょう。
公式URL
医学物理士の資格に関する公式URLは、次の通りです。
http://www.jbmp.org/certification/examination/
勉強時間目安
医学物理士の試験では、非常に多くの学問分野から出題されます。そのため、非常に勉強範囲が広く、全部を網羅して勉強しようとすると、時間が足りなくなってしまうことも考えられます。非常に広範囲にわたる出題範囲を分野ごとにまとめていくと、大きく分けて医学生物系と物理工学系の2つに分類することができます。限られた時間の中で効率よく勉強するためには、医学生物系と物理工学系の2つの分野のどちらかに力を入れるかを、それぞれ自分のレベルに合わせて見定めてから勉強に取り掛かる必要があります。
過去、医学生物系と物理工学系の2つの分野それぞれに関する出題数は大きく変わらず、ほぼ同数でつり合いがとれていたのですが、まれに医療生物系で60問、物理工学系で90問など、分野ごとの出題数に偏りが出る年もあります。
傾向としては物理工学系に関する出題数の方が比較的多く、頻出分野であるため、どちらかを選ぶなら物理工学系の分野を重点的に勉強したほうがいいと言えるでしょう。また、統計学に関する問題も多く出題されているので、確認を忘れないようにしましょう。
試験までの勉強時間の目安は人によって異なりますが、「医学物理士認定機構が認定する医学物理教育コースを修了している」もしくは「医学物理教育コースで修士もしくは博士の学位を取得している」という受験資格をクリアしている人であれば、そこまで早く試験対策を開始しなくても大丈夫でしょう。
合格者の中には、例年10月に行われる試験に対してその年の6月から勉強を始めているという人もいるほどです。その場合実質の勉強期間はおよそ4か月ということになります。自分のレベルをしっかりと把握した上で必要な勉強時間を計算し、計画的に勉強に取り組みましょう。
日本医学物理士会は、毎年6月上旬に医学物理士ミニマム講習会を開催致しています。医学物理士ミニマム講習会では、医学物理士の資質の向上を目指し、放射線物理学や生物学、医学まで幅広い知識を集約的に学ぶことができます。医学物理士有資格者や医学物理士試験合格者だけでなく、これから医学物理士を目指そうとする人も対象としています。
受験者の中には、この医学物理士ミニマム講習会の開催をきっかけに、講座を受けてから勉強を意識し始める人も多いようです。試験1か月前になるまでは毎日夕食後に3~4時間程度勉強時間を確保していたという人もいるようです。そう聞くと勉強時間をあまり確保しなくていいように感じるかもしれませんが、そんな人も試験1か月前になると、1日12時間以上を勉強に費やして、スパートをかけることもあります。
場合によっては、仕事や学業を一時的に休んで勉強に専念する人もいるようです。長期間一日数時間ずつコツコツ勉強するか、直前に短期集中するか、自分のライフスタイルや得意な勉強法に合わせたスケジュールを立てましょう。
受験資格として何らかの医学物理教育コースの学位を取得していることを前提とすると、受験者は医学物理士の資格を受験するのに最低限必要な基礎知識を有している人が多いと言えるでしょう。そのようなたくさんのライバルがいる中で独自の勉強法を確立し、他の受験者と差を付けるためにはしっかりとした対策が必要です。
試験対策としては、やはり過去問を重点的に勉強することが肝要と言えるでしょう。過去の試験問題を参考として作られた一般的な問題集も売られていますし、医学物理士認定機構のホームページでも過去問をダウンロードできます。
ただし、参考書と違って、ホームページからダウンロードする試験問題には解答がありません。そのため、問題を解いた後は自分の力で合っているか調べる必要があります。間違っていた場合はその理由を考え、次場間違えないようにしっかりと理解しましょう。練習問題をする目的は、実際に試験で出題された際に自分で答えを導き出せるようにすることです。そのため、その時の正誤に一喜一憂するのではなく間違えた理由をしっかり考えましょう。同時に、何が間違っていたのかも含めて掘り下げていくことをおすすめします。
おすすめ参考書ランキング
医学物理士試験の合格を目指すなら、試験を主催している日本医学物理学会が出版する参考書を使うのが近道です。同学会の出版する「放射線治療物理学」は放射線治療に携わる医学物理士に必要な基礎から応用までの系統的な内容が一通り含まれており、試験の頻出分野を網羅的に押さえたランキング上位の人気の本だと言えます。単に教科書的な理論にとどまらず、臨床現場での品質保証・品質管理に必要な実務的内容も豊富に含まれており、実務にも役立つ参考書です。
「放射線治療物理学」をしっかりと押さえた上で「診療放射線技師国家試験 完全対策問題集」(オーム社)のような問題集を活用するといいでしょう。問題集を繰り返し解くことで、自分の苦手分野や課題を把握することができるだけでなく、理解を深めるのに役だちます。
それだけでなく、医学物理士ミニマム講習会で使用したテキストも試験に役立つ内容が多く含まれているので、うまく活用すればいいでしょう。