受験資格
超音波検査士認定試験への受験資格は、3つの条件をすべて満した場合に得られるものです。
1つ目は、看護師、准看護師、臨床検査技師、診療放射線技師のいずれかの資格保持者であること。受験の際には、それぞれの国家試験合格証明書、または資格を証明する免許証の写しを送付する必要があります。
2つ目は、3年以上連続して日本超音波医学会の正会員または準会員、もしくは日本超音波検査学会の正会員であることです。年会費の滞納があると会員資格を喪失する可能性があるため注意しましょう。
3つ目は、日本超音波医学会が認定する超音波専門医または指導検査士1名からの推薦を得れば出願できます。
試験内容
超音波検査士試験は、体表臓器・循環器・消化器・泌尿器・産婦人科・健診・血管の7つに領域を分けて実施されるものです。試験日程は全ての臨床分野で共通で、事実上同じ年度には1つの領域しか受験できないのです。
試験内容は、筆記試験と超音波検査実績による書類審査の2分野があり、それぞれの正答率が一定以上の割合になると合格します。
筆記試験は医用超音波に関する基礎問題と、7領域の中から選択した1つの臨床領域から出題されます。第34回超音波検査士認定試験の場合、基礎と臨床領域共通で回答時間は各70分、問題数は各35問。回答はマークシート方式で、5つの選択肢の中から1、2つの答えを選択してくものです。
超音波検査士の1つの領域に合格し、次の年度に違う領域を受験する場合は、前の年度に出題されていた基礎問題が免除されます。複数分野で超音波検査士を取得したいと考えている場合は、臨床分野に重点を置いて勉強しておくことができるのです。
書類審査では、超音波検査実績を20症例まとめて送付します。領域ごとに指定されている疾患の分類に従って、自分が実際に超音波検査を行った症例をまとめていきます。抄録番号や年齢、性別、疾患コードなどをはじめ、超音波検査での所見と診断、超音波所見と臨床診断との関連、超音波診断をした際の写真とそのスケッチが必要です。
コピーは認められていないので、1つ1つていねいに作成しましょう。書類に加筆や修正が必要になるものや、所見に不備があったり誤字があったりすると、それだけで減点や不合格の対象になる恐れがあります。
さらにこの書類では、超音波検査を行った施設の臨床責任医師または常勤の施設責任者から署名・捺印をもらわなければなりません。そこで、超音波検査士の受験予定がある際は、あらかじめ推薦してもらいたい人に依頼しておくとよいでしょう。なお、検査を施行した施設が複数ある場合には、施設ごとに分けて抄録を作成し、それぞれについて署名と承認を貰う必要があります。
もしこの超音波検査実績に不正が認められると一定期間、超音波検査士が受験できなくなるなどの罰則があるため注意しましょう。
また、超音波検査士の認定期間は5年です。認定を受けた年から5年後には、改めて資格更新しなければなりません。資格更新の際は、指定された研修受講や学会発表などの業績を積み、25単位以上の取得が必要です。複数領域の資格を保持している場合は、最初の試験に合格した年から5年ごとにすべての分野をまとめて更新する必要があります。
受験料
第34回超音波検査士認定試験の受験料は20,000円です。受験料は改定される可能性があるので、公式サイトで正式な情報を確認しましょう。
受験料を入金する際は、通信欄に受験申込みをした際の受付番号を書く必要があります。そこで、最初にオンラインで受験申込みを行います。
受験料は郵便局に備え付けの払込用紙に必要事項を使って、日本超音波医学会宛てに振り込みます。
その際、通信欄には超音波検査士認定試験の受験料であることを明記します。オンライン申し込み時の受付番号、超音波検査士の資格を取得している場合は検査士番号(RMS No.)、日本超音波医学会または日本超音波検査学会の会員番号も記載しましょう。
なお、認定試験に合格した場合は、認定証交付のために認定料5,000円を添えて申請する必要があります。
試験日程
超音波検査士認定試験は年1回で、試験日程は例年、11月もしくは12月です。東京と大阪など複数の試験会場があります。
受験希望者は、5月下旬から7月中旬までに日本超音波医学会ウェブサイトからオンラインで申し込みます。
受験に必要な書類が準備できたら7月下旬までに申請書類一式を簡易書留またはレターパックで「日本超音波医学会超音波検査士係」あてに送ります。なお、郵送中の事故を避けるために、普通郵便での送付もしくは直接学会事務所へ持ち込むことは禁止されています。
難易度(受験者数、合格者数、合格率など)
2017年の第33回超音波検査士認定試験には約1,800名が受験しています。例年の受験者数は2000人前後で、合格者数は公開されていませんが、合格率は8割前後で推移しています。
近年の超音波検査士認定試験では、筆記試験の5つの選択肢から1つ選択する問題のほか、2つ選ぶ問題もあるため、本当に正しく理解しているかどうかが求められる試験になっています。基本問題と臨床領域の両方を確実に理解しないと合格が望めないため、難易度はやや上昇傾向と言われています。
超音波検査士の資格に関する公式URL
公益社団法人日本超音波医学会 https://www.jsum.or.jp/capacity/rms/index.html
勉強時間目安
超音波検査士の試験勉強を始める際は、まず日本超音波医学会のサイトで公開されている最新版の「超音波検査士研修ガイドライン」から、基礎領域に含まれる内容と、各臨床領域に含まれる内容を確認しましょう。
超音波検査士研修ガイドラインは、PDFで50ページもある資料で、WEB上にて確認することができます。各臨床領域の具体的な内容は体表臓器、循環器、消化器、泌尿器、産婦人科、健診、血管の7領域となっています。
超音波検査士試験を受けるためには、学会での活動や10症例のまとめが必要です。健診領域の書類審査に関しては、第34回(2018年)より大きく内容が変更されているため注意しましょう(症例のまとめは以前は20例でした)。
また第34回(2018年)より撮影技術や超音波解剖の理解に重きを置いた「撮影技術と解剖」の書類審査が新たに加わりました。超音波検査士試験対策はやるべきことが多いため、事前に時間配分を考え効率的に試験勉強をしていかないと時間が不足してしまいます。そこで試験対策として1年ほど前から準備を開始するのがおすすめです。
ここでは、トータルの勉強時間を700時間と設定して時間配分を考えてみましょう。
超音波検査士試験対策において、もっとも重点を置くべきなのは「臨床知識」です。それぞれの症例では何を書けば良いのか、どこの所見が重要なのか、などのポイントを知るために、できるだけたくさん症例を見ておきましょう。
例えば血管分野であれば、造影CTや血流波形から、萎縮や狭窄、流速、加速時間といった異常を見つけ、どういう症例が考えられるかを判断する必要があります。各疾患の好発部位、効果的なスクリーニング方法は頻出分野ですので、把握しておきましょう。
また、下腹部痛を訴える女性がいる場合、婦人科疾患だけではなく、外科や内科、泌尿器科など複数の疾患の候補があります。その症例単体を見るだけでなく、同時に関連疾患や類似する疾患の確認も必要です。それぞれの症例に関してガイドラインにある各疾患の基礎知識と超音波像とを関連づけて理解するだけでなく、疾患別に必要となる検査内容や、計測の注意点も覚えておきましょう。
また、腎動脈狭窄に対する治療として、血管形成術が広まっているなど、技術的なトレンドの知識を把握しておくことも重要です。さらに、腎動脈狭窄であればバルーン拡張、粥上動脈硬化症ではステント留置術を行うといった疾患と主な治療方法との関連も確認しておきましょう。ここまでの勉強時間の目安はおおよそ300時間です。
次に時間をかけるべきなのは「基礎分野」です。音響特性インピーダンスの反射条件や屈折条件など、音響関連の物理法則や生体の音響特性、波形の特徴など、暗記しなければならない内容が含まれます。
また、暗記するだけでなく周波数1.5MHzの連続超音波を水中に放射した場合の音波の周期を求めるなど、公式をもとに手計算をしないと回答できない問題も出題されます。多くの問題を繰り返し解きながら、わからない部分は解説をしっかり読み理解するような勉強法が有効です。
測定機器やプローブの条件については実務と関連させて覚えることができます。基礎分野については、およそ300時間が勉強時間の目安です。
「超音波検査実績の書き方」についても学んでおきましょう。試験で使われる書式は普段業務で使っているものと異なることが多いです。抄録を作る際は、施設でのレポートがもとになるため、まとめ方を把握しておく必要があります。
また、所見を書くためにどういった点を重視して観察すればよいのかなど、読影力を上げるためのテクニックも学んでおきましょう。この分野に関しては100時間程度の勉強時間を確保しておきましょう。
なお、スケッチや病変の解剖学的なマップなどを書くのが苦手な場合は、この部分の時間を多くとるなど、自分の得意分野や不得意分野に合わせて時間配分を調整するようにしてください。
おすすめ参考書ランキング
超音波検査士に関する参考書はあまり多くありませんが、出題範囲は学会のホームページで公開されている「超音波検査士研修ガイドライン」と重複する部分が多いので参考にすることができます。まずは最新のガイドラインを参考に必要な知識を補強していきましょう。
また、公式問題集である「超音波検査士・超音波指導検査士認定試験問題集」も試験対策にはとても便利で人気があり、ランキング上位と言えるでしょう。過去に出題された問題の中からポイントになる問題が厳選されています。
問題集にはCD-ROMも付いているので、画像を見ながら直感的に学習すること可能です。超音波検査士・超音波指導検査士認定試験問題集は専門医認定試験対策としてだけでなく、超音波診療の質を高めたい人にもおすすめです。より深く理解できるよう、ほぼ全ての問題に解説がついているため、試験対策としてだけでなく知識を深めるためにも、とても効率的に勉強を進めることができます。
他にも、超音波専門医認定試験向けの問題集にも参考になる箇所があります。