受験資格
透析技術認定士は、人工透析に関する知識やスキルがあること、透析業務におけるスペシャリストであることを証明するための資格です。
医師の指導のもと、人工心肺や血液浄化呼吸療法を行ったり、手術室やICU、心臓カテーテル検査室などで業務にあたったり、生命維持装置の操作や保守点検を行うことが、透析技術認定士の主な役割です。
透析技術認定士試験を受けるために学会などに加入する必要はありませんが、講習会への参加は必須です。この講習会に参加するための条件は、臨床工学技士もしくは看護師としての経験が2年、准看護師としての経験が3年(高卒の場合)、もしくは4年以上(中卒の場合)が必要。これらの条件はすべて透析業務の経験年数であり、常勤の場合に限られています。
講習会の受講方法としては、例年2月中旬から3月中旬ごろ東京で行われる講習会を4日間受講するか、3月から5月初旬にかけて行われるeラーニングを受講するか、会場受講とeラーニング受講を併用するかのいずれかの方法をとります。
例年、受講定員に達した場合には、申込みが打ち切られることになっています。確実に受験したい場合は、早めに申込むことをおすすめします。講習会の案内や提出書類については、公式のホームページで紹介されますが、ダウンロードすべきデータは一定の期間しか公開されません。日ごろからホームページをこまめにチェックしましょう。
試験内容
透析技術認定士の認定試験は、五肢択一のマークシート方式です。その内容は、透析に関する高度な知識が求められるものとなっており、非常に多岐にわたります。
臨床工学技士として透析業務を経験している場合は、それまでの業務と重複する内容になりますが、看護師や准看護師として経験を積んでいる場合は、改めて学び直す必要があります。計算問題などに慣れるには、それなりの勉強量が必要なのです。
試験内容は、認定講習会における講義科目と同じもので、「血液浄化療法の歴史」「血液浄化療法の工学的基礎知識」といった基礎的なものから、「透析機器・装置」「血液浄化法の事故と対策」「血液浄化療法の概要と実際」といった実務的な知識も含まれます。
また、「腹膜透析」「バスキュラーアクセス」「急性血液浄化」「慢性透析療法」「小児腎不全患者の透析」などの概要や、「腎不全患者の病態(腎性貧血他)」「腎不全患者の病態(心血管系合併症他)」「腎不全患者の病態(腎性骨異栄養症他)」「腎不全患者の病態(透析アミロイドー シス他)」「腎不全患者の病態(脂質代謝他)」といった病態についても学ばねばなりません。
さらに、「栄養管理」や「薬物療法」「臨床検査」「透析室の管理」「腎移植」「投資患者の看護」「透析療法における倫理的問題」「腎不全患者の手術」といった総合的な知識を問われるのです。
受験料
透析療法合同専門委員会(日本腎臓学会・日本泌尿器科学会・日本人工臓器学会・日本移植学会・日本透析医学会)が実施している認定講習会の受講料は、会場での講習会が36,000円(消費税およびテキスト代を含む)。eラーニング講習会も同様の36,000円に設定されています。会場での受講に eラーニング講習会受講を併せる場合は、50,000円です。
認定試験の受験料は10,000円(税込)で、認定証の交付を希望する場合は3,500円(税込)がかかりますので、ご注意ください。
なお、透析技術認定士と認められた場合も、5年ごとに更新が必要になります。透析技術認定士の更新にあたっては、指定された講習会や学会への参加、学術大会での発表などが必要です。ポイント制になっており、5年間で必要とされるポイントを貯めるためには、1年で2つ以上の講習会か学術大会に参加せねばなりません。このポイントの大部分をeラーニングで獲得できる制度もありますので、ぜひ活用してください。
これらの情報は、例年のデータに基づくものです。受験料は改定される可能性がありますので、公式サイトで正式な情報をご確認ください。
試験日程
実地の認定講習会は2月中旬から3月中旬ごろ、認定試験は5月中旬から下旬ごろにいずれも東京で実施されています。
講習会の申込み書をダウンロードできる期間は、8月初旬から1カ月ほど。申込み申請書受付期間は9月中旬から10月初旬にかけてです。遅れることがないよう、注意しましょう。
難易度(受験者数、合格者数、合格率など)
2017年の第38回透析技術認定士試験の受験者数1,298名のうち、合格したのは925名。合格率は、71.3パーセントでした。また、それまでの認定試験の結果を数年にわたって追いかけてみると、合格率は、66パーセントから72パーセントの間で推移しています。
この数字を見る限りでは資格取得が極めて難しい認定試験だというものではありません。しかしこれは、臨床工学技士としてもしくは看護師としての経験を2年以上積んでいるという前提があるから。こうした経験を積み、受験資格を得る道のりや広範囲にわたる試験内容を考え合わせると、透析技術認定士としての資格を得ることは、決して容易なものではありません。
透析技術認定士の資格に関する公式URL
勉強時間目安
透析技術認定士の認定試験を受験するためには、認定講習会を受講する必要があります。この講習会で用いられるのが、「血液浄化療法ハンドブック」という指定テキストです。このハンドブックには、透析技術に関する知識だけでなく、歴史や日本国内の現場の状況、倫理などの背景的知識まで、知っておくべき基本のすべてが簡潔にまとめられています。透析技術認定士の試験内容は、この血液浄化療法ハンドブックから出題されることが多くなっていますので、まずはこの本を軸に勉強法を確立していきましょう。
透析技術認定士に求められる知識はとても高度なものですが、過去の試験問題の傾向を見ると、難しい計算式や証明問題などはさほど出題されておらず、例年医療系の専門知識や工学系の知識を問われるケースが多いようです。事前準備はもちろん必要ですが、広範囲にわたる試験内容を全て完璧に網羅するのは難しいものです。頻出分野に的を絞り、重点的に学んでいくことをおすすめします。
例年の試験問題の傾向から分析すると出題率が高い分野は、「血液浄化療法の歴史」「クリアランス」「限外濾過率の計算」「ダイアライザの性質」「水処理システム」「疾患と治療法」「バスキュラーアクセス」「腎不全、透析の合併症」「透析に関する医療費」「透析液、補充液」「抗凝固」「腎移植」などです。これらの分野に関しては、漏れのないようにしっかりと勉強しましょう。
さらに、近年話題を集めている「腎移植関連や地震による血液透析用回路の標準化」などの自治問題に関する知識、倫理的な問題も出題される傾向があるため、テキストでの勉強だけでなく、これらの分野にも日ごろから関心を持つようにしましょう。
透析技術認定士の認定講習会を受ける条件のひとつでもある臨床工学技士としての実務は、その大半が試験範囲と重複しています。そのため臨床工学技士を経て透析技術認定士の受験に至る人は、試験を比較的容易だと捉えるかもしれません。
ですが、看護師を経て透析技術認定士を受験する場合は、新たに勉強しなければならない分野が多くかなり難しいものになります。様々な条件の人がいるため勉強時間の目安は一律ではありませんが、どのような状況下であれ実務での知識とは別に試験対策の勉強時間を確保する必要があるでしょう。自分の経験やバックグラウンドを把握し、自分にあった勉強計画を立てましょう。
透析技術認定士の試験対策には、まずテキストとなる「血液浄化療法ハンドブック」をしっかり理解しましょう。そして内容を十分に理解するためにも、過去の試験問題や練習問題など、できるだけたくさんの問題にふれると共に、特に苦手な分野の問題を繰り返し解いていかねばなりません。
透析技術認定士の試験問題は、5択から選択する方式となっています。過去問題などで勉強をする際には、ただ正解を求めるのではなく、正解以外の選択肢についても、なぜ誤りなのかをしっかり理解していくことが重要です。
全ての過去問を解いたうえで、間違えた箇所を何度も繰り返し解きなおすことで、苦手分野を克服することができます。繰り返し過去問に取り組む時間を確保するためにも、目標とする試験日程の少なくとも1年前から、勉強を始めていきましょう。
おすすめ参考書ランキング
まず活用すべき参考書は、透析技術認定士の認定講習会の指定テキストである「血液浄化療法ハンドブック」です。試験勉強を開始したら、はじめにこのテキストに一通り目を通しましょう。
ただ、この「血液浄化療法ハンドブック」は、全部で400ページ以上にもなるテキストで内容はかなり膨大です。これを全て完璧に覚えることは難しいでしょう。そこで受験生が活用している人気の参考書が「透析技術認定士受験必修過去問集」です。この問題集は本試験と同様の五問択一式で、かなり本番に近い内容です。更に全ての問題に詳しい解説がついているので、間違えた問題をしっかりと復習し、理解することができるため人気ランキング上位に入っています。
次いでおすすめなのが、「透析技術認定士予想問題集」です。この問題集は解説より問題数の充実に重きを置いており、できる限り多くの問題をこなしていきたいというニーズに応えてくれるものだと言ってよいでしょう。指定テキストや過去問などで一通り勉強ができたと思ったら、たくさんの問題をこなしていくのが効果的です。試験に合格するためには、こうした問題集を繰り返し解いてみることで、出題傾向に慣れていくことも重要です。
さらに難しい問題、応用問題に挑戦したいという方は、「透析技術認定士受験必修再現過去問集【応用編】」を手にとってみてください。応用問題と言っても、過去に実際に試験で出題された問題が中心です。そのため、試験に合格するためには、このような応用問題にもある程度慣れておく必要があります。詳しい解説も載っているので、間違えたりわかりにくい部分があったらしっかりと解説をチェックしましょう。そして少しでも理解しづらい個所があれば、テキストの該当部分に戻り、改めてポイントを押さえていきましょう。