受験資格
細胞検査士は、日本臨床細胞学会と日本臨床病理学会が試験を運営している認定資格で、国家資格ではありません。細胞検査士になるための受験資格は、3つの過程をどれか1つでもクリアすれば得ることができます。いずれも臨床検査技師、もしくは衛生検査技師の国家資格を持っていることが前提です。
「過程」の1つ目は、大学で細胞検査士養成所の過程を履修し、所定の単位を取ることです。細胞検査士養成コースがある大学を卒業した後、卒業後細胞検査士として勤務する際には、臨床検査技師の資格が必要です。
2つ目は、大学、医療短大、専門学校を卒業した後、いったん国家資格である臨床検査技師または衛生検査技師を取得し、その後、細胞検査士養成所の過程を履修することです。
臨床検査技師または衛生検査技師の国家資格を取得した後、細胞診業務の実務経験を1年以上積んだ場合にも受験資格が与えられます。
細胞検査士に合格すると、日本以外の国で細胞検査に携わることができる「国際細胞検査認定試験」の受験資格が与えられます。細胞検査士はさまざまな国で必要とされる資格で、取得すればさらに活躍の幅を広げることが可能。細胞検査士は、世界で活躍する第一歩となる資格なのです。
試験内容
細胞検査士認定試験には一次試験と二次試験があり、両方をパスする必要があります。
一次試験の試験内容は筆記試験で、総論・技術・婦人科・呼吸器・消火器・体腔液に関する各20問、計約120問が出題されます。細胞画像を見ながら答える「細胞画像試験」は全体のうちの半分、60問ほど出題されます。
二次試験は実技試験で、スクリーニング試験や同定試験があり、病気や組織型などを推定する力が問われます。病原の標本作成レベルを確認する内容も盛り込まれています。
一次試験にのみ合格した場合、翌年の一次試験が免除され、二次試験のみを受験することができます。免除の有効期限は1年間のみです。
受験料
2017年第50回の場合、細胞検査士資格認定試験の受験料は37,500円でした。支払方法は振り込みのみです。また、試験実施要項は改定することもあります。日本臨床細胞学会ホームページから配信される最新の情報をチェックしましょう。
受験料の振込みは、郵便局か他銀行からの振込みです。
郵便局からの振込みでは、必ず「第 〇 回細胞検査士資格認定試験受験料」という記入が必要ですので、記入漏れに注意が必要です。郵便局ATMを利用する際には追加メッセージ機能を利用して記入しましょう。
銀行からの振込みは、振込人を手入力します。氏名と連絡の取れる電話番号を入力してカード名義人だけの振込みにならないよう注意が必要です。
出願には、受験料振込み時の控えコピーの添付が必要です。振込み後の紛失がないようにしましょう。振込み手数料は自己負担です。
試験日程
試験日は一次試験と二次試験で別な日が設けられています。試験日程は、一次試験が例年10月後半~11月前半に実施され、二次試験は例年12月の実施されます。
一次試験の会場は東京と大阪で行われ、二次試験は東京のみで実施されます。出願に必要な書類の準備は8月初旬ごろから徐々に始めましょう。
例年8月中旬から願書などをダウンロードすることが可能です。願書到着期日は例年9月初旬となっていますが、余裕を持って準備し、早めに到着するように心掛けましょう。
難易度(受験者数、合格者数、合格率など)
細胞検査士の正確な受験者数は公開されていませんが、合格者数の受験番号の数と合格者数からの推測により、おおよその数を算出することができます。
受験者数は毎年ゆるやかに増加傾向がみられます。平均を見てみると一次試験では600名前後、二次試験では430名前後が受験しています。中には1年目に一次試験のみを受験し、二次試験は捨てる覚悟で2年目の合格を目指す人も多いようです。
例年、一次試験は40~50%、二次試験は60%程度で推移しています。どちらも半分程度は合格率していますが、試験を突破するにはどちらも合格していなければなりません。全体の平均合格率は30~34%程度です。前年度の二次試験不合格者が再び受験したケースもあると考えると、初めて受験する人が一発で合格する確率は、データの数字よりも下がるものと思われます。
国家資格ではない認定資格試験としては難易度が高いものの、細胞診の現場でも活躍できる資格です。
ただ、細胞検査士養成学校を卒業していない受験者にはハードルは高めの資格だと言えるでしょう。専門の学科を運営する大学の中には、合格率を提示しているところも多いです。中には100%に近い合格者を出す大学もあり、学ぶ場所の特徴を入念にチェックすることが大切になってくることが分かります。
公式URL
細胞検査士会ホームページには、細胞検査士の資格取得に関する通知や案内が掲載されます。また、資格取得後の更新やセミナーなどの案内も通知されています。
資格取得後に細胞検査士として働きたい人向けの求人情報を掲載するなど、資格を生かせる情報もあり細胞検査士を目指す方も資格取得後にも役立つ公式ホームページになっています。
細胞検査士の資格に関する公式URLは下記です。
http://www.ctjsc.com/
勉強時間目安
細胞検査士資格を取るためには、適切で確実な対策をする必要があります。専門の学科がある大学に通っている人は、講義の他に自分でもしっかりと試験に向けて勉強する必要があります。勉強時間の目安は、実務経験の有無や研修での理解度など、それぞれのライフスタイルの中で違いはありますが、要点をしっかり抑え十分な勉強の時間を設けることが合格への近道になるでしょう。
例えば一時試験はマークシート形式なので対策では、出題範囲を全てしっかりと理解しておく必要があります。合格に向けて絞り込んだ勉強法としては、過去問を繰り返し解くのがベストでしょう。
過去問は細胞学会が刊行している学会誌に掲載されているため、誰でも入手して学ぶことができます。ただし、細胞学会が刊行している学会誌に掲載されている過去問には解答がついていないため注意が必要です。問題を解いた後、正解しているかどうか自分で調べて判断する必要があります。
他にも、専門の問題集を活用することもできます。専門の問題集なら、解答がついていたり頻出分野を分かりやすく解説したものもあり、より効率的に勉強できます。フォトテストも問題集を重点的にチェックし、勉強しておきましょう。
二次試験の対策ではスクリーニングの練習よりも典型的な細胞の症例に、しっかり目を通しておきましょう。二次試験は筆記および細胞像試験(カラープリント) と実技試験、さらに面接があります。面接では働く病院に関する質問などが中心で、難しいものはありません。ただし病床数など基本的な項目は把握してすらすらと答えられるようにしておく必要があります。
実技試験では、検体作成手技の一連の流れを判定します。実際に検体を作成する部分だけでなく、検体の性状確認や手技後の消毒など一連の流れ全てに関してチェックされていますので、油断してはいけません。準備から最後まで一連の流れをスムーズに行うことができるようにしっかり復習しておきましょう。
試験会場には、パスツールやピペットが準備されています。しかし使い慣れたものと異なるため道具が使用しにくく苦戦する受験者が例年多いようです。道具に関しては持ち込むことが認められているため、自分が使い慣れたものをいくつか用意していくのが安心だと言えるでしょう。予備が必要になることは滅多にないかもしれませんが、中には緊張して手元がくるったり、運搬の途中で自前のものが破損してしまうこともあるかもしれません。
そんな緊急事態に備えて、道具は予備も含め複数セット準備しておくのが安心です。それだけでなく、万が一自分の道具が使えなかった場合のことを考えて、どのような道具でもすぐに使いこなせるように普段から訓練・準備しておくことも合格するためには大事な試験対策だと言えるでしょう。
また二次試験に関しては、一次試験を降格した受験者向けに対策の講座や研修会が開催されています。特に実技試験に関する研修会では、実際に検体を見た後に講師が各設問について解説してくれます。このような試験対策は個人ではなかなかできないものなので、試験対策にはこのような講座や研修会もうまく活用しましょう。
おすすめ参考書ランキング
細胞検査士試験対策には、専門の参考書も販売されています。参考書として最も有名なのは日本臨床細胞学会が出版している「細胞検査士細胞像試験問題集」です。この参考書では過去20年間に出されたスライドの細胞画像を紹介しているため、一次試験対策だけでなく二次試験対策まで一緒にできるのがポイントです。
文章を見るだけでは頭に入ってこないことも、視覚で捉えながら勉強することができるので、効率的に試験対策をすることができる参考書といえるでしょう。またほとんどの画像はとても画質もよく、それぞれに詳しい解説もついているのがポイントです。
最新版の参考書でいうと「細胞診断学入門」も人気がありおすすめです。主に医学部などに通う学生向けに初歩から説明しつつ、細胞検査士の資格取得も視野に入れた実践的な内容を盛り込んでいます。細胞診断学の基礎と臨床応用を習得できるよう、総論と各論に分けて必要な事項がまとめられています。
重要なポイントが理解できているかセルフチェックができる復習問題が章末についているのもおすすめできる点です。その他にも、「ポケット細胞診アトラス」のように、試験対策だけでなく日常業務の中でも活用できる本もあります。遭遇する機会の多い組織型から希少例まで多くの症例が掲載されており、細胞検査士資格認定試験の一次試験に出題された症例は網羅されています。
働きながら試験勉強をするのはとても大変です。そのため、1年間の実務経験を経て試験合格を目指す人は、なるべく毎日の業務の中で細胞に関して学びながら、実際の試験の対策にもなるような勉強法を確立するのが肝要と言えるでしょう。講義や研修会に参加したりランキング上位の人気の参考書を組み合わせたり、様々な方法をを試しながら自分なりの勉強法を確立しましょう。