血液浄化専門臨床工学技士とは
血液浄化専門臨床工学技士とは、血液浄化療法(アフェレシス療法)を行う臨床工学技士の認定制度です。血液浄化療法は、慢性腎不全など方に対して人工透析を行う治療法です。治療には3つの種類があり、単純血漿交換療法、血漿灌流療法、直接血液灌流療法があります。
それぞれの治療は、病気の種類や状態によって異なります。血液浄化療法は、薬に比べて副作用が少ない治療法だと言われていますが、メリットだけでなくデメリットも考えられます。特に、血液浄化療法を行うには特殊な機器が必要になります。また、血圧が低下したり出血したりと、いろいろなリスクを伴うため、臨床工学技士は高い技術や知識が必要となるのです。
血液浄化専門臨床工学技士の難易度はどれくらい?
平成29年度の合格率は32.7%なので、難易度としては高い方でしょう。認定講習会を受講しただけでは難しいので、事前に勉強しておくことが必要です。また、受験資格にはいくつかの要件があります。
- 医療資格を保有している
- 指定講習会を受講している
- 指定講習会を受講していから5年以内である。(ただしペースメーカ関連業務修得セミナー2期のセミナーを受講していれば受験することができます。)
また、認定要件を満たす必要もあります。
- 血液浄化専門臨床工学技士の試験に合格している(5年以内)
- 申請をした年から連続して5年正会員で会費を払っていること
- 臨床工学技士として5年以上の実務経験があり、現在も従事していること
- 申請した年から5年間の間に1回以上「日本臨床工学会」に参加していること
- 申請前年度から5年間に要件を満たす単位を50単位以上取得していること
以上の受験資格や認定要件があるので、自分の資格が満たされているか確認しておきましょう。
血液浄化専門臨床工学技士の合格率は?
平成29年に行われた血液浄化専門臨床工学技士の受験者数は238名で、合格者は78名、合格率は32.7%と発表されています。血液浄化専門臨床工学技士は今回で第9回目の試験となっており、まだまだ受験者数自体は少ないようです。
試験を受験するには、血液浄化専門臨床工学技士の指定講習会を受講することが条件です。もし、指定講習会を受講してから5年が過ぎてしまうと、受験資格が無くなってしまいます。5年を過ぎたら、再度講習会を受講しなければいけません。
平成30年の試験は3月10日に行われる予定で、試験開始は9:00から14:30まで、試験会場は東京大学で行われます。試験はマークシート方式で5者択一方式です。合否発表については、試験会場かホームページで受験番号を掲載します。
血液浄化専門臨床工学技士とは
臨床工学技士が血液浄化専門臨床工学技士の認定資格を取るメリットとは何でしょうか。まず、合格率32.7%という狭き門を通ったという事実が、より高度な能力を所有している証になります。血液浄化専門臨床工学技士として認定されることは、下記の条件が必要です。
- 指定の講習会を受講して5年以内、日本臨床工学会にこの5年の間に1度以上参加し、新たな知識の吸収に意欲がある
- 臨床工学技士として5年以上実務に携わり、経験が豊富である
- 日本臨床工学会の正会員として日々の研鑽を積んでいる
条件を満たした臨床工学技士が、血液浄化理論や各種の透析療法、透析機器システム管理といった理論と、透析療法そのものへの理解を深められます。また、感染管理や院内感染防止策まで幅広い知識を身につけたことを明らかにするものです。こうした知識の中には、透析室の設計や設備に関する知識までが含まれており、周囲の同僚からも一目置かれる存在になることは間違いありません。
また、自身のさらなる飛躍を目指す方にとっては、キャリアアップへの第一歩と位置づけることもできるでしょう。現在の職場から、さらに自分の能力を高く買ってくれる職場への転職を考えている方にとっても、大きな武器になるはずです。
血液浄化専門臨床工学技士の勉強方法
血液浄化専門臨床工学技士の資格を受験するには、指定講習会を受講することが必要です。そこでは、以下のような内容について勉強します。
第1日目
血液浄化理論・各種透析療法・急性血液浄化療法・透析機器システム管理・抗擬古薬・透析室管理と組織マネジメント
第2日目
血液浄化と薬剤・透析療法と看護・医療情報管理・パスキュラーアクセスの管理・急性血液浄化・アフェレシス・感染管理~透析医療に関連した感染症と院内感染防止策・短期合併症
第3日目
清浄化管理・透析室の設計・設備・透析にかかわる医療制度と医療経済・災害対策・安全管理・事故対策・長期合併症とデータ管理・関連法規
このほかにも、血液浄化療法ハンドブックや指定講習会のテキストなどを参考に勉強を進めていきます。
血液浄化専門臨床工学技士の講習会とは
平成28年の血液浄化専門臨床工学技士の講習会は、8月に東京で行われました。実施期間は3日間で、受付は9時から17時くらいまで行われています。
血液浄化専門臨床工学技士の講習会は、全部で3日間行われます。受験資格は、会員、非会員問わず医療資格保有者となっています。
受講料は会員の場合30,000円非会員は40,000円です。受講の申し込みは、日本臨床工学技士会のホームページからオンライン申し込みができます。ただし、定員制なので、満員になると申し込みができません。
指定講習会を受講したあとに検定試験を受験しますが、もし不合格になっても再受験することは可能です。その場合指定講習会の受講から5年以内であれば、そのまま翌年も受験できます。ただし、試験を受験するたびに、認定要件を満たさなければ認定資格と認められないので、注意が必要です。
血液浄化専門臨床工学技士の手当は医療機関によって異なる
血液浄化専門臨床工学技士になると、手当はどのように変化するのでしょうか。もともと、臨床工学技士として職を得ている方の年収の相場は400万~600万円程度です。臨床工学技士の活躍の場は、さまざまな医療施設にあります。しかし、その施設のある地域や勤務形態によって給料や年収も大きく異なるというのが実際のところです。年齢や勤務先によっては、200万円代後半から800万円と、大きな差が出てしまうことも否定できません。
給料体系を同じくする診療放射線技師などと比較すると、手当などの違いで年収がやや高い傾向にあります。しかし、それでも20代前半の臨床工学技士の場合は、年収300万円前後です。20代後半になって、勤務先による差が大きくなり年収の相場が変化し始めます。30~40代になると、その年収も400万~650万円ほどが相場となり、格差が広がっていきます。
臨床工学技士から血液浄化専門臨床工学技士へとステップアップすることで、基本給があがったり手当が支給されたりすることもあるでしょう。しかし、そのベースはあくまで勤務先の給与体系です。血液浄化専門臨床工学技士の資格は、比較的新しいものでもあるため、勤務する医療機関によってその待遇は変化するものだということは認識しておきましょう。
血液浄化専門臨床工学技士の資格は更新制
臨床工学技士の活躍の場をさらに広げ、資質を向上させることを期して血液浄化専門臨床工学技士の資格認定制度が始まりました。これは、メリットとともにデメリットも大きな血液浄化療法を行うための認定制度です。そのため、特殊な機器についての知識や、さまざまなリスクへの対処方法を熟知していることが求められます。また、広範な知識をそれぞれにアップデートし、より新しい医療知識と技術を患者さまに還元する能力も求められるでしょう。
そのため、血液浄化専門臨床工学技士の資格には、更新制度が導入されています。資格認定時と同様に、「日本臨床工学会の正会員であること」「認定期間中に1度以上学会に参加していること」「要件を満たす単位を50単位以上取得していること」などを条件として、資格の更新が認められます。更新を希望する人は、2週間の提出期間のうちに日本臨床工学技士会宛に必要な書類を提出し、更新料1万円を支払うことが必要です。
書類や更新料などによって更新が認められた人には、新たな認定証と認定カードが交付されます。しかし、認定期間はその認定証や認定カードに明記された5年間です。その後、5年ごとに更新する必要がありますので注意が必要になります。